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2 設立の要件

 

過疎化に悩む中国地方東部の中山間地域に属し隣接し合う上記16市町村が、それぞれ所属する県(鳥取・島根・岡山・広島の4県)域をこえて結成した組織である。平成5年(1993)8月、当初15市町村(のち1町加わる)の首長が日南町に集いサミット(首長会議)が開催されたのがはじまりであるが、そこから「県境サミット」の通称が生れ、一般にはこの称が用いられている。

この協議会-県境サミットが県域をこえて結成されたのには、それなりの現実的条件があったとみられる。それは第一に、これらの地域ではかつてたたら製鉄が行われ、また和牛や木炭の生産が行われていたことから、それに伴う地域的な交流があった。行政のわくをこえる通婚圏も形成されていた。いまはこれらの生産は衰徴し、かつての関係は薄れたが、過去に存在した地域間の交流の記憶がこんにちの人びとの間に共通の認識として保持されており、それがあらためて蘇ったというべきか。こうした意識の問題はけっして小さくはないと思われる。

第二は、地図(図1)を見れば分かるように、中山間地帯としてはかなり(といって相対的なものであるが)交通網の整備が進んでいることである。すなわち伯備線(岡山〜新見〜米子)、姫新線(新見〜姫路)、芸備線(新見〜備後落合〜広島)、木次線(備後落合〜宍道)のJR4線が、新見・備後落合を二つの結節点として東西南北に走っている。一方道路は南方を東西に走る中国自動車道と、これに東から米子自動車道、国道482号線、180号線、182号線、183号線、314号線、432号線などがときには互いに交叉しながら、ほぼ南北に走っており、その他の県道以下の地方道と相俟って地域間の往来を助けていることがあげられよう。

この県境サミットは日南町が提唱して結成されたことから事務局も同町に置かれているが、参加16市町村のうち当町だけが4県すべてに境を接しており、その立場にふさわしい位置にある。そのことが県境サミットのアイデアを生む誘因にもなったと思われる。

さて関係市町村の首長による県境サミットは前述のように平成5年8月にもたれたが、当初は15市町村で、翌年4月岡山県哲多町が加入して16市町村となった。哲多町は県境に接しておらず条件を備えてはいなかったが、その趣旨に賛同して加わったもので、本格的な活動がはじまるまでにその加入が承認されているから(平成6年4月)、事実上最初からのメンバーといってよい。この結果構成市町村の総面積は2,695.68平方キロメートル、人口は平成7年現在108,517人である。参加市町村すべてが程度の差こそあれ人口の減少と高齢化という過疎地共通の悩みをかかえていることはいうまでもない。また産業構造として第一次産業の低退と第二次・第三次産業の成長が共通の現象であるが、その比率は自治体によって多少の差がある。

 

 

 

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