また、一人の農家の古老は、「自分の子供には教えなかった農業を、都会の子供に教えている。やはり伝統的な日本の農業は、子供に引き継がせるべきだ。だからあの留学生達は、俺たち百姓の宝だ。」「留学生が来るということは、留学生ばかりでなく、その親・祖父母・親戚と友人など何倍もの人がやって来ることなのだ。これは想像できなかったことだ。この人たちが皆この村を故郷と思ってくれるのだ。有り難いことだ。」と言っています。現在村では都市との交流をすすめていますが、受け入れ農家は八坂村で最も早く都市交流をしていたということになります。以上のように里親を引き受け、経験を重ねていくうちに、自分たちも大きく変貌し、人生のプラスとして捉えているようです。現在里親の高齢化が問題になってきていますが、20年の歴史を振り返ってみますと、里親を引き受けてくれた農家があったからこそこの制度が続いています。今まで苦労をしてきた受け入れ農家の皆さんは「八坂村の宝」であり、生涯学習、都市交流をおこなっている最先端にいるのではないでしょうか。アンケート結果にも顕著に表れていますが、これから補助の率を上げたりして受け入れ農家を増やし、育てていくことが村にとっての大きな問題になると思います。
○ 山村・都市交流を深めること
今年度(H7)より「交流センター」が完成し、いよいよ使用可能となります。この交流ホールを使うまでもなく山村と都市の交流は行われています。出留生の親は非常に熱心に、足しげく八坂村を訪れています。学校における授業参観、PTA作業、お泊まり会等です。このときに村民は、新しい考えやエネルギーに触れることができます。また、村民運動会にも多くの親が参加してもらっています。グランドが交流の場なのです。また、育てる会のそれぞれの行事にも駆けつけています。これがまさに八坂村の都市交流であります。地域の祭りにも参加しているという実態もあります。
学校において子供達が得ているものと同じように、親たちが都市の人々と交流することにより、新しい発想や考え方が生まれてきます。現在は国際化時代の到来と言われています。特に共存・共生の時代とも言われています。変化や刺激の乏しい山村の八坂村は、山村留学生を受け入れることによって様々な所で共存・共生と言うことを肌を通して感じ取ることができると思います。毎年東京代々木で行われている「まちとむらの交流会」に受け入れ農家の人達に参加してもらっていますが、その際には、かつて八坂村に山村留学した子供達、その親たちが何人も訪ね、村民と交流しています。