難聴者の住みよい福祉のまちづくり
大阪府中途失聴・難聴者協会
上野哲人
1. 大阪府の福祉のまちづくり条例
私の住む大阪府は、平成5年に全国に先駆けて「大阪府福祉のまちづくり条例」を施行しました。これにより、不特定多数の人が利用する都市施設の福祉的設備改善が、新設のもの及び既存のものも含めて改善対象になっています。大手私鉄や地下鉄のエレベーター設置などが徐々に進んでいます。ただ一定規模の大きさの建物しかこの条例の対象にならず、小規模な施設の整備改善は棚上げのままになっています。
「障害者と共に生きるまちづくり」のためには、建物内の通路の幅や出入り口の段差の解消、スロープの設置等の義務づけによる整備改善は大切です。さらに、その上に環境面での障害者への配慮が必要になります。条例は必要性に迫られてこそ作られ、施行されるのですが、特に私たちの様な聴覚障害者のための情報保障の面では、全くと言って良いほど言及されていません。条例草案の段階で、私たちの声が入らなかったことと、それ以上に現状があまりにも未整備だったことから、そこまで盛り込めなかったように思えます。
条例は改正できるのですから、今後の私たちの要望次第です。
2. 住み良いまちづくりの目指すもの
さて、私たちの住み良いまちづくりとは、どのようなことから始めればよいのでしょうか。たいていの府県や市町村に、「まちづくり推進」担当部署があると思います。私たちは、何をなぜ求めるのかを明確にし、担当部署に要望を出すことから始めたいと思います。
大阪では、まちづくり条例が出来た後、大阪府福祉部の中に、まちづくり推進室と言う組織ができ、府民への条例の定着のために啓発キャンペーンなどが始まりました。私も、この中の障害者団体の構成員の一員として参加しました。ノートテイクの要約筆記者を同行しても、行政サイド、学識経験者や市民団体の代表、他の障害者団体の代表の中では、耳が聞こえないハンディの大きさを毎回の会議で痛感するばかりでした。2年間担当しましたので、会議の都度中途失聴・難聴者の聞こえの障害をアピールし、行政や市民団体、専門の先生方に少しは聞こえないという障害を分かっていただいたものと思います。
しかし、聞こえの保障を条例の中に盛り込むことは簡単には行きません。具体的に各種のデータを揃え、場合によっては署名運動で国会に請願しない限り、府県や市町村の条例に反映は難しいと思えます。まず、中央官庁を動かさないと、まちづくり条例の中に私たちの求める情報保障を反映できないと思います。余談ですが、今全難聴が取り組んでいる、「耳の聞こえないもの、口のきけない者には免許を与えない」等の絶対的欠格事項の改善を求める署名運動で分かるように、あまりにも私たちのことは一般社会から理解されていません。
平成10年10月に第6回全国難聴者研究大会静岡大会が開かれました。この大会の決議文は、私たちの人権を守る上での最低限の要望でもあります。この大会で、NTT関西DoCoMoと東京DoCoMoから各協会に渡された2種類の携帯電話用の音声アダプターは、NTTの方針と私たちの要望が一致して、モニター用に提供していただいたものです。全難聴が郵政省などに前々から問題提起していたからこそで、補聴器や人工内耳装用者に役立つものと思われます。