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(2)メディア変換システム

耳で聞く代わりに、「肌で聞く」、すなわち音声を振動へ変換するシステムに、来客感知、赤ん坊泣き声感知、ベル音感知の実用例がある。時計と組み合わせて目覚しに応用したり、呼び出しにも使用されている。ページャー(ポケベルなど)も振動による信号を採用している。振動を併用する音楽鑑賞システムもここに含められる。

「目で聞く」、つまり音声を視覚に変換するシステムは、光信号を用いた実用例に、来客感知、赤ん坊泣き声感知、ベル音感知の各システムがある。感知して後、光信号が発せられる原因となった玄関、赤ん坊、電話のところへ赴く、といった使用の仕方が通常である。

しかし、何といっても書記言語、文字への変換が圧倒的に情報量が多い。筆談が原型だが、 1〜2名への筆記通訳はノートテイクと呼ばれる。集団への筆記通訳として、OHP要約筆記が伝統を築いてきたが、近年、OHP要約筆記をパソコンが支援するシステムが開発され、さらにパソコンからじかに要約筆記を行うシステムも徐々に普及しつつある。速記用キーボードを用いたものから、通常の市販のパソコンを用いたものまである。

LED字幕表示装置は、定型的な文章を繰り返し流すのに適し、交通機関における停車駅表示や新聞等の電光掲示板にも使われる。

通信・放送分野へ目を向ければ、聴覚障害者のためと銘うった文字への変換システムは、字幕放送が代表である。有線を介した聴覚障害者専用文字通信機器が一時開発されたが、文字表示が可能な携帯電話ないしOHSの開発、普及によって、重要性が薄れつつある。通信・放送分野で特徴的なことは、通常市販され普及している機器を「目で聞く」ために活用する点である。ファックスしかり。パソコン通信、インターネットもファックスも、電話という音声メディアを文字に変換するシステムとしてとらえることができる。ただし、用途はもっと広い。

 

3. おわりに

 

自然の耳は万能で、融通無碍といってよいが、補聴器をはじめとする機器は限られた機能しか持たない。そこで、個々の具体的なバリアによって機器を組み合わせる知恵が要求される。

電話は、米国から直輸入の“WILLIAMS SOUND TELETALKER HI-POWER”WM-TEL004が使いやすい。御客さんが来たら、「おしらせらんぷ」や「システム5」がフラッシュ光で知らせてくれる。講演会では、赤外線ループ「アシストホーン」で開く。これが設置されていなければFM補聴器「EXTEND EAR」を使って。OHP要約筆記があればさらによく、パソコン要約筆記があれば入力されたデータをフロッピーで拝借できるだろう。友人と飲むときには、会議用拡聴器「千里がんレポ」を持参し、筆談支援用具「メモレ」を併用しよう。銀行に行ったら、「合図くん」をポケットから取り出す。疲れたら、文字放送用アダプターを起動してテレビを字幕放送で楽しもう……。

まだまだ不足であるとはいえ、バリアフリー商品は音量ともに増加し、高まってきた。今日、問題になるのは、これらの情報を集中管理して、相談にのり、斡旋する機関である。

バリアフリー商品の情報の一部は、インターネットを通じて情報が手にはいる。インターネットをやっていない人には、「ワールドパイオニア社」がある。

しかし、冒頭で述べたように、ちょっとした環境整備でコミュニケーションは改善される。環境整備を少し先に進めて、情報管理を行う公的な機関を設置することが望まれる。全国各地の聴覚障害者情報提供施設に、こうした機能をもたせることはできないだろうか。

 

 

 

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