肌で聞く。要するに、音声というメディアを別のメディアに変換する方法である。ごく単純なコミュニケーションなら、光信号によることもできる。振動による伝達も、無線と組み合わせると、実用に耐える。複雑な情報を盛り込むには、音声を文字に換えるのが一般的である。
便宜上、二つに分けてみたが、両者は相互に無関係なものではない。「目で聞き」ながら耳を傾けると、より明瞭に聞き取れる場合がある。耳をすませながら「目で聞く」と、見える文字に抑揚やイントネーションが感じとられる。コミュニケーションは、五感を動員して行うのである。
2)補聴援助システム
補聴援助システム(ALD, Assistive Listening Devices and System)は、難聴者の聞こえの向上に主眼を置いたシステム一般をいい、その代表は補聴器であり、補聴器を支援するシステムがこれに続く。
(1)感覚補償
聴覚補償の機器の代表は、補聴器である。近年、デジタル技術を応用したプログラマブル補聴器やデジタル補聴器、あるいは非直線増幅機能をもつノンリニアー補聴器や超小型のCIC型、そして補聴器と人工内耳の中間に位置するトランソニック(周波数圧縮型補聴器)が登場し、多様な聞こえにできるだけ合わせる機器が開発されている。
音声は、耳の外で補聴器により拡大され、外耳→中耳→内耳→聴神経→脳……と伝わり、言語として認識されて始めてコミュニケーションが可能になる。
補聴器は、音声の拡大という機能限定的な道具であり、コミュニケーションそのものを改善させるわけではない。また、補聴器は、騒音の中で必要な会話を聞き分けたり、遠くの演壇で話す講演に耳を澄ますなどの、自然の耳が有する機能を持っていない。そこで、補聴器とは別の装置を加えて、自然の耳が有する機能に近づけなければならない。
遠くの話し手に耳をすますために、話し手の口元にマイクを置いて聞く。マイクと組み合わせたFM補聴器がそれである。テレフォン回路を有する補聴器ならば、ループを介して聞くこともできる。ループは、磁気によるものと赤外線によるものがあり、それぞれ特徴をもつ。ループは、ことに難聴の聞き手が多数の場合、効果を発揮する。
騒音の中で話し声に耳をすますのも同様の方法でできるが、マイクの代わりに集音器を用いる方法もある。
テレビに耳をすます場合、携帯用、個人用ループの機能を特定化させたテレビ補助具がある。
電話に耳をすます場合、受話器の磁波を補聴器(テレフォン回路を使う)が直接拾うと、雑音がカットされて明瞭に聞き取れる。しかし、近年、セラミック振動板の採用等で磁波の弱い電話機が増えたため(米国ではセルラーホンを除いて違法)、電話機と補聴器の間に磁波を強化する電話補助具を挿入して聞く。電話補助具には、磁波増強用のほかに、音声拡大用のものもある。電話本体と電話器の間にアンプを挿入して、音声を拡大する方法もある。補聴器対応の電話機、音量増幅装置付き電話器も一部市販されている。
蝸牛神経(有毛細胞)の毛の減少により早田が聞き取りにくくなったら、喋る速さを遅くする話速変換装置が活用できる。