FM補聴器を利用して
兵庫県 大上 清
1. FM補聴器とのであい
補聴器を装用して21年になる。使用した台数は確か12台(耳かけ型6台、箱形6台)と記憶している。最初は一番小さな耳かけ型を長髪にして隠す様にして装用した。しかし難度が急速に進み役立たず、少しでもよく聞こえる補聴器を求めて手探りで次々と買い求めたが会議等で話の内容が理解できる補聴器はなく役所勤めを辞める決意までした。
当時(昭和60年の秋)始めて参加した広島での全国難聴者研究大会で産経新聞編集委員の田島さんとの出合いが縁で、今、愛用しているリオン社製の箱形FM補聴器(FM受信装置内蔵型)に巡り合い今に至っている。私の聴力は両耳とも95〜97dBで1000HZ以上の高音域は全く聞こえない。FM補聴器を初めて装用した頃はもう少し聴力もあって会議等でFMワイヤレスマイク(送信機)を使えばノートテーク無しで内容は大体理解できた。
また、講演会、研修会等では演台のマイクにFMマイクをくくりつけて聞くと、雑音もなく明瞭に聞こえるのである。磁気ループ等の補聴援助システムがまだ普及していない頃であったので本当に素晴らしく生き返った様な思いをした。
2. FM補聴器と私の使い方
FM補聴援助システムは愛媛大学の立入助教授が次の様に解説されている。
「FMラジオ放送と同じ仕組みで、話者の声を放送局(送信機)から電波で飛ばし、それをラジオ(受信機)で受け話者の声を聞く。このFMラジオと補聴器を接続したり、音を増幅する機能を持つラジオ(FM補聴器)を使うものがFM補聴システムである」そして補聴システムには大きく二つに分けられる。一つは補聴器本体にFM受信装置が内臓されているFM補聴器(筆者はこの補聴器)と、もう一つはMF電波の受信機に補聴器を接続する方法である。
FM補聴器はスイッチの切替によって普通の補聴器として使用ができるので私の場合は必要時以外は殆どFMは使用していない。処が問題はFM補聴器を普段に利用する場合は箱形であること(耳かけ型は現在は市販されている)。また選択できる周波数が少ないので、周波の異なる場合は電波の安定性が悪いために聞こえ悪い。またその他、メーカの違う磁気ループ、赤外線補聴システムが用意されている場合には別な普通補聴器が必要である。その為、普段は左耳に普通の箱形補聴器、右耳にはFM補聴器を両耳装用し、屋外とか磁気ループ等の補聴援助システムの配慮されていない場合にはFM補聴器を活用している。
3. FM補聴器の使用を試みる人のために
私の場合は、今、使用しているFM補聴器が普通に使っても聞こえが良いので愛用しているが、自分の耳に合った補聴器を装用されている方は、内臓したFM補聴器を今さら求めるよりFM受信機を接続する方式がよいのではないかと思う。受信機も個人用ループと、シルエットインダグター(補聴器をTにして付着させる)をFM受信機に接続する場合と外部入力端子(オーディオインプット)を付けた補聴器に接続する方法がある。外部入力端子は装着は難しいが音質の良さは一番であると聞いているので私も次は是非購入して試してみたいと思っている。特に補聴援助システムが用意されていない会議、講演会等に参加する場合、学校での授業等にはFM補聴システムが期待されるのでないかと思う。私達は、公的施設の全てに補聴援助システムをと運動しているが、前途遼遠で聞こえの手段は今後も自助努力にまたなければならないと思う。
自分の耳に合った補聴器と、それをカバーする援助システムの選択が難聴者の課題ではないか。