型補聴器で検査を行い、口元で話してもらえば聞き取りがおおむねできることの確認ができた。改めて私の聴力に合わせてポケット型補聴器の調整をセンター担当官が行う。
見たこともない小型ドームの天丼ような機器に補聴器を入れて調整する。イヤーモールドそしてコードをモールドに取り付けるレシーバーのタイプも聴力に合わせて選択する。まことに念入りである。
聞き取りの検査はさらに念が入っている。口元から離して机の上に、あるいは私のポケットに補聴器を入れて雑談をする。どの程度聞き取れるのかを雑談を通じてチェックしてくれている。さらに福祉センターでは単に補聴器の適合だけではなく聴覚障害者の心理面のリハビリも業務のひとつである。聴覚障害に侵された人たちは,心理面での苦悩も深い。雑談を通じて障害に取り組む意欲を引き出すべく努めておられる。私も心理面で多くのアドバイスを受けることができた。そして補聴器フィッティングのチェックも繰り返して行なってもらったことになる。
こうして長いコード付きポケット型補聴器が私の耳の伴侶となった。それから4年余り、半年毎に福祉センターを訪れ、聴力検査とフィッティングの適合性のチェックを受けている。4年経ち補聴器の取り替えも行なった。福祉センターの担当官に定期的にお世話になっている限り、私の耳に適合したこれ以上の補聴器はないだろう、またこれ以上を期待すること、たとえば音楽を聞くこと、私の聴力では現存するいかなる補聴器でも無理ならんと思っている。
自分に適した補聴器を選べる知識と耳を持つように
聴力喪失して10年。自分の聴力に合った補聴器を見出すことはきわめてむずかしい。多額の補聴器への投資と失敗を繰り返して年数と経験を経てようやくこの程度が補聴器で助けられる自己の聴力の限界かとおおむね知ることになる。
しかし補聴器販売店も認定補聴器専門店制度を設けて専門の技能者が対応するようになってきている。また電子技術のめざましい進歩で新しい補聴器、性能が向上する補聴器が登場するといわれている。デジタル補聴器も市場に出始めている。補聴器利用者にとり、これからはより明るい展開を期待できるかもしれない。
それでも結局、本当に自分の聴力に合った補聴器はどのような補聴器であるかは、自分で探すことには変わりはない。一人ひとりの聞こえの程度は異なるし、他の人が代わって聞いて判定してくれる、あるいはすぐれたコンピューターが私の聞こえの適合性を判断してくれる、というようには私の生きている間は到底期待できないであろう。
補聴器を選べる知識と耳を持つ必要性があるがそれは決して容易ではない。これはダメ、これはイイ、と言えるところにいくまでにはやはり補聴器遍歴の旅が必要かもしれない。
新しい補聴器の登場と共に私の福祉センター通いはこれからもさらに続けなければならない。少しでも「聞こえ」をよくしたい、との気持ちでセンターの担当官に相談を続けていくつもりであり、本当によい担当官にお目にかかったと、心から感謝している。