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これからも一般社会に参加していくかぎり要約筆記の方のお世話をたえずお願いしていかねばならない。私が半人前であることはもう動かせない。

難聴者等の集まりでは磁気誘導ループとか赤外線とかの補聴援助システムが補聴器の聞こえをよくしてくれる。これに加えてのOHPによる要約筆記あるいはパソコン要約筆記者の支援はまことにありがたい。

 

補聴器のフィッティングのむずかしさ

現在のレベルまで聴力を喪失して10年余りとなる。聴力はこのレベルまで一挙にすとんと落ちた。以降定期的検査を受けているが、ほとんど底を横這いしている。これ以上低下すればもはや補聴器での聞き取りは不可能になると思うが、幸いというかまだ横這い状態が続いている。補聴器はこの10年間むろん何種類も使っている。定石としてまずは耳にすっぽり挿入する小型のカスタムカナル型、これでは不十分として耳全体を覆うフルカナル型、そして耳かけ型と段々と目立つ補聴器へと移っていった。いずれもイヤーモールドで耳にきっちりと入れているはずだが、耳の形が変化するとみられ痛くなってくることもある。半年毎にイヤモールドを作り直す必要もあった。それでもなおハウリング(ピー音)が起こることがある。健聴の人はどうしてピー音が聞こえているのかあちこちを見ることもあり、たいへん恥ずかしい思いをすることになる。

耳かけでもう一つ困ったことはイヤモールドと耳かけ補聴器をチューブでつないでいるが、このチューブが変質して固くなりチューブにふれる部分が痛くなることである。

しかし、私の聴力の場合、結局どのタイプも会話をするに十分な聞き取りには有効ではなかった。こうしたことは結果として分かったのであり、ここに補聴器を購入するむずかしさがある。

補聴器店で聴力検査をと、聞こえに適合して調節をしてくれる。「どうですか。聞こえますか」と訊ねられる。それぐらいは聞こえるが、これで本当に聞き取りができるのかどうか、これでフィッティングされているのか、自分でもよく分からない。こちらが分からないなら補聴器店が分かるはずもない。まあこんな程度かな、と思って購入することになる。熱心にいろいろ調整してくれる販売店の人にすまない、という気持ちもやはりある。

そうして装用してみるが結局会話での聞き取りは十分ではない。それはフィッティングが十分でないため、と分かるにはそれ相応の年数と経験が必要である。補聴器では結局この程度しか聞こえない聴力になってしまっているのか、もうどうしようもない、とのあきらめの心境になってしまうからだ。

聞き取りはおおむね断念、社会での活動のさいは要約筆記の方に個人的にお世話になる、という生活を6年余り続けた。家では家内がほとんどメモ書きをしてくれた。

テレビを見ていると、レポーターが取材しているさいにマイクを差し出し、耳にコードのついたイヤホンを入れている。あの方式ではもう少しましではなかろうか。

 

東京都心身障害者福祉センターのお世話になって

そこで東京都心身障害者福祉センター聴覚言語科を訪れた。担当官が聴力検査を行い、ポケット型補聴器で試すことになった。聴覚言語科には年間2千人の聴覚障害者が相談に訪れていることも始めて教えられた。日常生活用具給付の査定もしてくれる。

数週間後に補聴器販売店の人も立ち合って手持ちのイヤモールドにコードを付けてポケット

 

 

 

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