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が、例えば、ALDS(補聴援助システム)の中心である磁気ループについて、敷設方法のマニュアル(=基準)は存在するのであろうか。

私は、携帯用の個人〜小人数用のALDS(ループ、ワイヤード)や1000〜10000人でも使える大型の磁気ループなどを多数作ってきた。個人が新しいものを作ろうとすれば、お金もかかる。最近では、メーカから、色々な小物も作られるようになったが、必ずしも、よく検討されて作られているようには思えない。

ユーザである我々の意見を中心に、よく検討された性能のよい製品がほしいものだ。ALDS(補聴援助システム)にしても、多数の関係者による十分な意見交換に基づいた研究開発、マニュアルが大切である。

 

3. 「PA(電気音響システム)」なかに「ALDS(補聴援助システム)」を含めさせよう

 

ALDSは狭義では、人工内耳や補聴器の聞こえの限界を補いよく聞こえるようにする電気音響機器のことである。これに対してPAとは、一般の方々のためのマイク、ミキサー、アンプ、スピーカなどによる電気音響システムである拡声のことをいう。PAの実体は何かと言えば、主たる対象者が健聴者であるという違いこそあるが、目的は「聞こえの限界」を補うもののことである。だから、PAはALDSの一つである訳である。

私は、小は個人のための用から、大は5000人の大会に磁気ループ敷設するなど、年間で約90回位の補聴援助のボランティアをしている。一般の全国大会や県レベルでの大きな大会などでは必ず、専門のPA業者が入っているので、臨時に磁気ループを敷設すると言っても音の心配は、そんなにしなくてもいいので楽しく仕事をさせてもらっている。

イベントでは、専門のPA業者は多くの場合、現場では若い方々が働いているが、皆さん、ALDSにも大いに関心を持ってくれるし、磁気ループがよい聞こえになるよう協力もしてくれる。PAについても尋ねれば、いろんなことを教えてくれる。徳島では、ホールなどの音響担当者は徳島県中途失聴難聴者協会と相談しながら、自分でやれば安いですから皆さんご自分のところの磁気ループは自分で作り、敷設されている。多くのケースではALDS(補聴援助システム)に対しても、大変に好意的に扱ってくれる。

磁気ループや赤外線がまだ入っていないところで、個人〜小人数用のシステムや県関係のイベントで会場の全面に磁気ループを敷設する時でも、私のミキサーに音をください、と言えば「ハイヨ!」と気安く応じてくれるし、ALDSのテストにも協力してくれる。しかし、残念ながら時折、難聴者のことを存じないのかALDS(補聴援助システム)への協力を面倒そうにされるPAマン(オペレータ)もおられる。これは、私たちが運動してこなかったからであるが、全国PA業者やPAマン(オペレータ)に、公共施設は、健聴者だけのものではないこと、高齢社会であり、重度の難聴者にも、よく聞こえるようにしてあげようと研究されることが、あなた方の聖なる仕事だということを理解させてあげることが必要だと思う。

難聴者も住みよい音響環境を持とうと思うなら、直接の専門家集団であるPA業者やPAマン(オペレータ)と普段から接触し仲良くなることが大切である。このような普段の積み重ねなしに、住みよい音響環境を持つことなど難しいと思う。高齢社会や障害者のバリアフリーを進めるという人権問題からも、公共施設のホールなどには法律による強制力でALDSを入れさせねばならない時になっていると思う。しかし、直接の担当者であるPAマン(オペレータ)やPA業者へのアプローチの大切なことも理解しておきたい。

 

 

 

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