4. 補聴環境を整えよう
PAとは、健聴者のALDSのことなのだから、一般にはPAとALDSは重なる。多くの場合は、簡単である。PAのライン出力端子からALDSのライン入力端子に音声信号を送ってもらうだけで解決する。
但し、ホールなどの専門のPAマン(オペレータ)がいるところは、設備も完全であるが、普通は、独立したミキサーなどがない簡単なパッケージ型のシステムのところが少なくない。ライン出力端子もヘッドフォン出力端子も録音出力端子もなくて、困ることも多い。そのような会場では概ね、会場の音響システムは芳しくないことが多いので、私は自分のシステムをメインに切り替えて、こちらから会場のシステムに音を送ることもある。また、会場のシステムの使用を諦めて、全て持ち込みのPAとALDSシステムを使うことも多い。要約筆記サークルや難聴者協会の多くの会合では、これで十分に間に合うだろう。必要な場合には、何時でも何処ででも持ち込みの機材でPAとALDSに対応できるよう準備しておきたいものである。
簡単な可搬型のPAシステムも持ってない協会やライン入出力端子の接続がわからないところでは、PAとALDSの両方のつまりマイクを2本手に持つことも多いようだ。自治体の視聴覚室などには、大変に豪華な設備を備えているところが多くなった。が、殆どのところでは、専門家もいないので、全く使われていなくて、ワイヤレスアンプで代用しているところもある。これからの時代では、ある程度の知識があれば誰でも使いこなせる設備であることが求められると思う。
これとは反対に、PAのある部屋には一定の機能を持つミキサー(ミキシングコンソール)や録音機器も必ず備えてほしいものである。つまり、ALDSを接続することを前提とした機器を入れてもらいたいものだ。FMのALDSも市販されるようになったが、これらの個人用の補聴システムが簡単に、公共施設のPAと接続できるように標準化していくことも大切である。
PAの場としては、ホールなどでの講演会、演劇、ミュージカル、コンサート、民謡・日舞バレエ、映写会や、空港や駅構内でのアナウンスなどがあると思う。このなかで問題なのは、空港や駅構内でのアナウンスであろう。空港や駅構内に磁気ループや赤外線を入れることは難しいのではなかろうか。ルールを決めれば、入られるようにも思うが、FMはどうなのだろうか。演劇はPAを入れないことが多いようだが、人工内耳や補聴器装用者のために、ガンマイクなどで集音してALDSを作動させてくれている。
問題の一つは、健聴者には聞こえる程度の広さの会場での「会議」などである。
5. 会議での聞こえの確保について
マイクさえ使ってもらえれば明瞭に聞くことができるのに、健聴者はなかなかマイクを使ってくれない。だから時にはマスコミなどを通じて、難聴者の願いを知ってもらうことも大切であろう。私は、自分が出席する会議では何時でも10本程度のマイクを使えるようにしているが、私のような例は全国でも少ないだろう。
FMの使用も役立つと思うが、結局のところ、よく聞こえるようにするには多数のマイクを使えるようにすることである。2〜3本のマイクでは、どうしてもマイクを手にせずに話そうという人が有るものだ。マイクを使ってもらうことをお頼みするには、何時でも話せるように多数のマイクを用意することが肝心である。
多数のマイクを準備するとして…、次のようなものがある
●ハンド型の有線マイク……線が絡み合って大変、持参するにも重いが、安い。