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受益者の組織である全難聴や難聴者協会が中心となり、耳鼻咽喉科医、ST、専門家、病院、行政、社協、補聴器店などの関係者の連携によって障害者の社会参加促進事業としての「補聴教室」が行われるならば、日本における難聴者等の聞こえと福祉は格段に改善されるであろう。ALDSを使いこなすことでも、このような「補聴教室」なしでは、困難だろうと思われる。

徳島県中途失聴難聴者協会は、日本における難聴者等のリハビリテーションの進展と補聴援助システムの普及による聞こえの改善を目的に、事態の改善を願い2年前に「補聴学フォーラム」を開催した。これが今回の京都シンポに繋がったと思うが、我々が一番に願ってきたことは補聴教室開催事業といったものが、障害者の社会参加促進事業に加えられ全国の何処においても、難聴者等の聞こえが改善されることであった。

人口が83万人という小さい県である徳島県では、早くから徹底した補聴器装用相談事業とともに、耳鼻科医、聾学校や難聴者学級の教師、補聴器店、行政の関係者、難聴者などによって毎月、運締と「補聴研究会」が開催されてきた。徳島県中途失聴難聴者協会でも早くから各地で「難聴者教室(=補聴教室)」を開催してきたが、これを維持するのはなかなか経済的に大変苦しいのである。

そこで、全国へのアピールが事態の改善には早いだろうと考え、前記の全国を対象とした「補聴学フォーラム」を行い、幸いにも今回のシンポに繋がり、希望が生まれてきた次第である。しかし、補聴教室開催事業といったものが、障害者の社会参加促進事業に加えられるのを待ってはおれない。そこで、話は変わるが、全国の何処でも平成10年度の今年から、要約筆記奉仕員養成講習会が、格段と増えていると思うが、徳島県でも、県下の各地から、徳島県中途失聴難聴者協会に委託して開催したいので協力してほしいとの依頼があった。多忙をきわめているので受けたくないのだが、5時間の「補聴教室」を加えることを条件にひきうけ、小さな協会なので苦しいが、今年も県下の各地で耳鼻科医や字幕放送ではNHKの技術陣にも助けてもらい、「補聴教室」を開催している次第である。

 

4)意見交換、研究開発、マニュアルが必要である

ALDS(=補聴援助システム)が敷設されている施設は少ない。その少ない施設の少なくないALDS(=補聴援助システム)の性能が良くないことは既に述べた。これまでの関心のなきが、不味いALDSを作ってしまったのではないか、との意見も述べた。パリアフリー、福祉の町づくりが喧伝されるなかで、一人難聴者だけが、落ちこぼれているように思えること。「バリアフリー、福祉の町づくり」にも、難聴者だけは埒外のようであることも既に述べた。

バリアフリーが大いに喧伝されるなかで、「ALDS(=補聴援助システム)」の敷設されない豪華な公共施設が作られそうなことを新聞等で知って、難聴者協会の役員さん達が慌てて、行政へ駆け込んでゆくのだが、はてさて困ったことには、ALDS(=補聴援助システム)は、どのように作ればよいのかマニュアルはないのではないか。学者などには知られていることかも知れないが、私の見るところ、工法のマニュアルはないのではなかろうか。

よく聞こえるALDS(=補聴援助システム)の作り方のマニュアルが、もしあれば、役に立たないALDSがこんなにも作られる筈がなかろう。

工法のマニュアル(=基準)がなければ、「福祉の町づくり」から、除外されるのを行政の責任とばかりは責められないかも知れない。福祉の先進国には、あるのかも知れない

 

 

 

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