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山つくり、欲しい人には分けてあげた。確かに、皆さん便利だと喜んでくれたが、必ずしも全員が十分に使いこなせてはいないことが分かった。皆さん、これまでにPAやALDSに関心があった訳でもなく、電気音響について基礎的な知識を持っている訳でもないのですから、当然のことであろう。

人工内耳や補聴器の進歩によって、多くの方々が静かなところであればご自分の耳で聞こえるようになってきた。要約筆記がなくてもALDSさえあれば、何とか聞こえる方々が非常に多いのである。しかるに、ALDSの設置されている会場が少ないですし、設置されていてもよく聞こえないものが少なくない。普通は、ここで要約筆記やノートテイクの派遣ということになるでしょうが、徳島県中途失聴難聴者協会では、要約筆記の個人派遣の依頼があれば、携帯用の個人〜小人数用のALDSを貸してあげ、聞こえるようにしている。ただ、難聴者一人では気後れするのか、なかなか一人ではセッティングが難しいようである。そこで、書くことはまずないのですが、要約筆記者も派遣して、ALDSの臨時の設置を手伝ってもらうことにしている。例え、ALDSの扱い方を教えても全ての要約筆記者がALDSを正しく扱えるようにはならない。が、補聴援助奉仕員といった方々がおられると日本の難聴者の聞こえの確保が一段と進展するだろうと思うのである。

補聴援助のボランティアをしているのは、多分、日本では私一人だと思うが、私のようなボランティアをしてくださる方々が全国の各地に多数できれば、難聴者の社会参加が大幅に進むと思われる。私は、全難聴や各地の協会の依頼で、全国大会などでALDSを敷設するボランティアをしている。地元の徳島でも県庁や市町村からの依頼もあり、一年では約90件位ものボランティア活動をしている。一人では、これ以上の依頼は受けられそうもない。それで、同じ仲間が増えてほしいと切実に願っている。

補聴援助ボランティアがおれば、ノートテイクの多くは携帯用の個人〜少人数用のシステムで、ご自分の耳で聞こえるようにしてあげれると思われる。難聴者協会の音響環境の整備にも働いてもらえる。但し、この仕事は一般の方々には、わからない隠れた作業が多いので、難聴者協会からの一定の評価がなければ続かないのではと思われる。

 

3)日本の難聴者等の聞こえを改善するには、障害者の社会参加促進事業のなかに、補聴援助奉仕員養成事業とともに、補聴教室開催事業といったものが必要である。

これは前から私が主張し続けているものであり、特に、大切と思っているものである。要約筆記奉仕員養成事業で要約筆記というものが、全国の津々浦々にまで拡がろうとしており、ありがたいことである。が、現在、一番に求められているのは、人口の5%をしめ全国で600万人といわれる難聴者の補聴問題の解決であろう。

STが法制化されたので、将来的には補聴器のフィッティングなども改善され、難聴者等のリハビリテーションもよくなると思うが、補聴器店、病院、STなどだけでは、難聴者等の聞こえの改善と確保は困難と思われる。

ALDSは難聴者等のリハビリテーションに欠かせないものであるが、ALDSの使い方などは同障の仲間からでないと、本当のところは伝わらない。高齢難聴者が補聴器を使えるようになるのも、仲間のいることが大きいようである。病院などのSTだけでは無理であろう。また地域社会の行政や社協のはたす役割も大変に大きい。行政の末端の各地で難聴者協会などが中心となって開催される補聴教室なしに、補聴器や補聴援助システムの普及とそれによる日本の難聴者等の聞こえの改善はあり得ないだろうと思われる。

 

 

 

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