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補聴援システム(=ALDS)等の法制化が絶対に必要である

-難聴者の「完全参加と平等」を実現するには-

 

全難聴人工内耳部副部長

遠藤 孝

 

私は、130db以上の最重度の中途失聴者だったので、運転免許証の再取得にも、人には言えないような筆舌には尽くせない苦労を味わったものです。それが、阪神淡路震災のすぐ後、大津赤十字病院で人工内耳の手術を受け、約20年ぶりに音声を取り戻しました。まもなく4年になります。聞こえを取り戻せたことへの喜びは、今もなお思い出す度に、感謝の念が胸にこみ上げてくるほどです。

諦めていた人生が再び可能になった喜びは、まさしく生き返った思いである。障害の受容などと申しますが、全く聞こえなかった約20年間も相当に激しい活動をしてきたつもりですが、生きながら死んでいたも同然だったと言っても過言ではありません。

私が人工内耳でこのような喜びを得られたのは、徳島の伝統である人工内耳や補聴器の聞こえの限界をカバーして、聞こえをよくする補聴援助システム(=ALDS)のことを知っており、ALDSを駆使してきたからだと思います。徳島県中途失聴難聴者協会に入会してきた殆どの方々は、異口同音に、協会に入って何が一番よかったかという問いにたいして、「ALDSと補聴器に出会えたこと」だと申しております。

しかるに、全国的には今なお、ALDSの大切なことが知られていません。日本におけるコクレア社の人工内耳装用者は、9/25現在1150名で、そのうちALDSの利用に絶対に不可欠のAISの販売数はわずか250個だそうです。AISなくしてリハビリテーションも社会参加も難しいと思うのですが……。そもそもAISが保険の給付になっていないことが理解できません。

人工内耳の関係者には「人工内耳も補聴器もALDSと併せてはじめて一体なのだ」というユーザには極めて当然と思われることが、全く分かっていなかったのではないでしょうか。福祉のまちづくり、バリアフリーで障害者の社会参加を促進するなどということが声高に開かれるなか、ただ一人難聴者の音響環境は一向に改善されようとしません。

そこで、私は、1]人工内耳も補聴器も補聴援助システム(=ALDS)と併せてはじめて一体なのだという考えかたが大切であり、社会の皆様にALDSの有り難さを知ってもらうことが必要である2]人口の5%をしめ、全国で600万人といわれる難聴者の聞こえの確保には、ALDSの普及が必要であり、そのためには強制力を持つ法律の制定が必要である3]600万人の難聴者で、補聴器を用いているのは約118万人。普及率は約20%にすぎない。ALDSで聞こえることの有り難さを知ってもらうためにも、まず補聴器の普及が大切である4]補聴器の普及のためにも、聞こえの確保のためにも、補聴問題を知ることが重要であり、難聴者の社会参加を促進するために「補聴教室開催事業」といったものが必要である5]ALDSはマイクの使用が前提。難聴者が一人でもいれば、厭わずにマイクを持つことが常識になるような社会にせねばならぬ6]PAの概念のなかにALDSも含めることによって、補聴援助システムの普及が望まれる7]会議での聞こえ確保の方法8]徳島での取り組み、これらのことについて述べてみたい。

 

 

 

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