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表7 就学前の聴覚リハビリテーションの成果

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*  -y -mo:一歳一カ月、リハビリテーション開始時の年齢

** 100を正常言語発達の基準とした指数(WSC WSC-R)

 

7. 幼児期以降の聴取環境の整備

 

現代社会では幼児から高齢者まで様々な形で人と交わり、社会的な活動に参加する。人の集まる集団の単位は家庭、保育・教育施設、余暇施設、地域社会など多様で必要な情報の交換が行われ、固有の方法で帰属している。幼児期から学童・青年期にかけては、最も教育的な関わりが多く、そこでの活動への参加の主体性・協調性・独自性はその後の社会参加の姿勢の基礎を作ると行っても過言ではない。

しかし、聞こえる子どもが地域で活動をする同じ状況を難聴児が享受するためには、聴取環境についての整備が欠かせない。具体的な方法については他車に記載を譲るが、一般に教室の中での教師・保母の距離や、音声と騒音との比はことばの聞き取りに直接影響を及ぼすと考えられる。そこで着席位置を担任近くに移し、FM補聴器や赤外線補聴器の使用または、板書などの視覚的教材の使用が有効であるといえる。

このように難聴児に必要な聴取環境の整備に関連して、幼児期以降は「どうして聞こえにくいのか」「補聴器はどういうものか」「どうすると聞き易いか」といったテーマで、子どもの所属する集団全体で難聴について話し合い、考えさせることができるので、様々な個性を持つ人々が共に生きることの大切さを基本に伝えていきたい。

学童期中・高学年になると、他者の評価が認識でき、学級集団に適応したいという意思が高まる。また疎外されることを恐れて、他児と異なった立場をあえて望まない場合もある。そこで、学童期以降の聴取環境の整備には難聴児本人が自分自身について、また聴覚障害について積極的に考える力と、合理的に問題を解決する意向を身につけることが必要になる。普通校に通学する難聴児では、校内に同じ障害をもつ友人がいないために、孤立したり、難聴である自分について肯定的な認識(自信)が育ちにくい状況にある。

少年期・青年期の同障の子ども達との交流の場や障害について考える場を用意し、聴取環境については自ら獲得していく力を付けることは、聾学校通学児も同様に、極めて重要な意味をもつ。聴覚障害についての現代科学の到達点など広く知識を求め、聴覚障害の仕組み、場面における対応方法、遠隔通信や代替コミュニケーション方法など積極的な聴覚環境の整備を模索することが期待されるといえる。

 

 

 

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