図5a,bに、難聴児の単音飾語音の聞き取りと単語の聞き取りの成績を示した。図では、聴力が重度になると聞き取りが困難になり、その傾向は単音節(図5a)に著しいことがわかる。単語では個人差が大きく、とくに90〜110dBの聴力程度の児童では0%から100%まで広く分布しており、不確実な音節の情報をアクセントや音節数などで補いながら総合的に聞き取っていることが想像できる。このように補聴器によって聴取域値を改善し、トップダウン情報処理による音や語の識別・理解の能力を高める過程を「聴覚活用」または「聴能指導」という。単語では音節情報(仮名文字に対応する情報)や韻律情報(アクセント、持続時間、強弱、抑揚)など、単音節と比べて情報が多く聴覚活用の効果が顕著に示されていると考えられる。