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(1)聴覚活用とは

外耳・中耳の病疾等による伝音難聴は、音を伝達する系の障害であるので補聴器で音を大きくすれば、100%語音を弁別できる場合が多いが、内耳以降の障害による感音難聴は、音を感受する系の障害なので一般に語音の弁別能が低下し、聴力程度や内耳機能の状態などにより補聴器の効果に個人差が大きい(表5)。そこで高度の感音性難聴児の補聴器の適合はその後のリハビリテーション指導によって実用性が高まることになる。言語獲得以前の幼児では、あいまいな音響情報について、獲得した言語知識を動員して、積極的に聞き取っていく姿勢を学ぶことになる。

 

表5 感音性難聴者の聴力と語音聴取力

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図5a,bに、難聴児の単音飾語音の聞き取りと単語の聞き取りの成績を示した。図では、聴力が重度になると聞き取りが困難になり、その傾向は単音節(図5a)に著しいことがわかる。単語では個人差が大きく、とくに90〜110dBの聴力程度の児童では0%から100%まで広く分布しており、不確実な音節の情報をアクセントや音節数などで補いながら総合的に聞き取っていることが想像できる。このように補聴器によって聴取域値を改善し、トップダウン情報処理による音や語の識別・理解の能力を高める過程を「聴覚活用」または「聴能指導」という。単語では音節情報(仮名文字に対応する情報)や韻律情報(アクセント、持続時間、強弱、抑揚)など、単音節と比べて情報が多く聴覚活用の効果が顕著に示されていると考えられる。

 

図5a 単音節語音の聴取能力

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