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人工内耳を通して色々な音を聞きことばを獲得するようになると、「音が聞こえる」をまず言うようになります。それから聞こえ始めであるTレベルを知らせることが出来るようになり、音が大きいも徐々に言うようになりますが、初めのうちは刺激に伴って音の増大感が生じたときに大きいと言い、本来のCレベルより低いところで反応することが多いようです。一方、言語習得前失聴(2歳前に失聴)の学童などでは逆に、測定時Cレベルを超える刺激が入っていても平気で我慢し、装用時にうるさがったりします。こうした音の大小の概念は、様々な音量の音を聞く経験の中で培われるものと思われ、先天性や言語習得前失聴といった音経験の乏しい子どもの場合、30dB以上の音量の増減は表現されずかつ過大な音量の刺激を入れない人工内耳を使用しながら、主観的にCレベルを判断する能力を身につけることは、難しいことかもしれません。この点からも、装用初期には鎧骨筋反射等の他覚的な評価が、マッピングの助けになると考えます。

<音入れ後の人工内耳装用状況>

幼小児のマッピングは、その後の装用へスムーズにつなげることが大切です。我々の経験では、音入れ直後から終日装用出来たのは約6割で、装用を嫌がった子ども達は、いずれもT,Cレベル測定時に刺激が不快レベルまで達した先天性の高度難聴児達であり、音入れ後スイッチを入れるとしばらく泣く様な行動が残るもののマップの調整で3週間後には抵抗なく装用できるようになった例や、音入れ翌日から装用を嫌がり、Cレベルを下げて本人に納得させて装用するようにして、約1カ月半で終日の装用が可能になった例などがありました。最も装用が困難であった子どもは、初回T,Cレベル測定後、ヘッドセットを装着することすら嫌がったので、まずスイッチを切ってヘッドセットを着ける訓練から始め、1カ月間T,Cレベルの測定も行いませんでした。ヘッドセットが着けられるようになってから、感度レベルを低い値に設定し、徐々に最適感度に近づけながら、T,Cレベル測定とマップの調整を併せて行い、約4カ月後に終日装用が可能になりました。現在は、就学前に装用した全例が、終日装用しています。

 

 

 

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