(2)聴覚言語と視覚言語の競合
一方、8歳で手術が行われた別の患児Bでは術後3年(図10a)と6年(図10b)いずれの時点でも側頭葉の詔書による活動が極めて低いままでした。上述した患児Aの話では、彼にとって人工内耳は「めがねみたいなもの」で、ないと非常に不便であるとの事でしたが、患児Bは、人工内耳からの音入力にあまり頼らず、日誌やキュードスピーチ、筆談を多用し、また周囲の友人も難聴に理解がありキュードスピーチなどを使えるものが多いことが特徴的でした。この患児では音声だけでなく、話者の顔も同時にビデオで提示すると側頭葉の著明な活動が観察され(図10c)、通常では聴覚言語処理を行う上側頭回が視覚言語の処理を行う様に発達をしたものと考えられます。このような所見は他の先天聾の人工内耳使用者でも確認されていますが、言語習得後失聴者では読話で側頭葉が活動した例はみられていません。