なっていました。しかし、最近Clarionのシステムで、SAS(simultaneous analogstimulation)という方式が開発され、実用が開始されています。この方式は回路の改良により各チャンネルの同時アナログ刺激でもチャンネル間の干渉を最小限におさえたもので、低音域のチャンネルでは低周波数の、高音域のチャンネルでは高周波数のアナログ波形が同時に入力されます。現在までの結果ではSASは従来のCISよりさらに高い語音弁別が得られる場合があると報告されていますが、これも現段階ではCISとSASのどちらが確実に良いとは言えず、患者さんの使用感による選択もほぼ半々に分かれています。
4)機器の小型化、MRIへの対応など
人工内耳では語音の符号化だけでなく機器の様々な改良がなされていますが、その中で最も代表的なものが機器の小型化です。人工内耳を装用している方の不満で最も多いものの一つが、機械が大きくて目立つという事です。これについてはプロセッサを小型化して補聴器同様に耳掛け型にしてしまう事が可能になり、各社とも近年中に導入予定です(図7)。ただし、現実的には幾つかの問題もあります。ひとつは費用で、保険でカバーされるのは箱形のスピーチプロセッサか耳掛け式かのいずれかのみになると予想されますので、実際の生活で両者を使い分けるためには、どちらか一方は患者さんが自費で購入しなければならなくなると予測されます。また、耳掛け式のプロセッサの電源は小さな電池で使い捨てになります。1個の電池で約80時間連続使用できるとされますが、箱形で再充電可能な電池を使うのにくらべるとお金がかかります。語音の符号化が高度になれば、消費電力が増え、もっと早く電池が減る可能性もあります。