近年、コクレア社の人工内耳は22チャンネルミニシステムからニュークレアス24というシステムに変更され、本邦においても今後はこのシステムが主流になるのでその特徴を簡単に述べておきます。このシステムの最大の特徴は、語音の符号化法を適宜選択してプログラムを自由に変更できる点で、SPEAK法だけでなく、後に述べるCIS法でも駆動できます。したがって、人工内耳手術の時点でSPEAKかCISかの2者択一を迫られなくなり、いろいろな施設からの報告や、自施設の成績、患者さんの選択に応じて語音の符号化法を選ぶ自由度が増すと考えられます。また、将来SPEAK法とCIS方式の両者の特徴を兼ね備えるとされるACE(advanced combination encoders)という符号化法も搭載される予定です。ただし、このACEという符号化法がどの程度、語音認知を向上させるかは今の所明らかではありません。
このシステムのもう一つの大きな利点は、刺激電極による聴神経の誘発電位がモニターできる点で、電極が正常に稼働しているかのチェックや、幼小用のマッピングの客観的参考データとしての利用が期待されます。
(2)CIS法語音の特徴を抽出するのではなく、音声波形をいかに忠実に再現して効率的に入力するかという考え方に基づくのがCIS(continuous interleaved sampling)方式です。この方式では、音声信号をまずいくつかの周波数領域に分解し、それぞれをパルス状の矩形波に変換した後、低域周波数通過フィルターをかけます。こうすると、もとの音声波形は2相性のパルス列になり、各パルスの振幅はもとの音声波形の音圧にそれぞれ相当します。各電極のパルスにわずかな間隔をあけ、上記の振幅変調をおこなって順次発火させるのです。このような処理を行うと各電極の発火がオーバーラップすることがないので電極間の干渉がなくなり、音声信号を忠実に伝えることができるという考えかたです。また、1秒間に約1000回あるいはそれ以上の電極発火が可能で、高速に入力されてくる音声の時間情報をより正確に入力することができるとされています。
現在、この高頻度刺激方式を採用している人工内耳にはオーストリア・メデル社のCOmbi40や米国アドバンスト・バイオニック社のClarionなどがあります。いずれもSPEAK方式の人工内耳とほぼ同程度の語音弁別成績が得られています。
(3)アナログ刺激法
Clarionは本邦でも認可されて使用が開始される予定ですので、もう少し説明をつけ加えます。このシステムでも、符号化法は一つに限定されず、CISやアナログ刺激を選択することができます。特に、アナログ刺激について述べますと、これは人工内耳の開発当初から使用されてきた原理で、入力信号を帯域フィルターを通して周波数帯域に分け、さらにダイナミックレンジを圧縮して聴神経の反応できるレンジに調整して刺激するものですが、従来は電極間の干渉が問題となってSPEAKやCISのパルス刺激方式が優勢に