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2)内耳と難聴

さて、中耳のさらに奥にある内耳(蝸牛)の機構はどうなっているのでしょうか(図2)。鼓膜から耳小骨を経てアブミ骨の底の部分に伝えられた音の振動は、かたつむりの形をした蝸牛という部分に入り、蝸牛の中のリンパという透明な液体を振動させます。その結果、この液体の中にある基底板という部分がが揺り動かされ、その上に乗るコルチ器という特殊な構造物が振動します。このコルチ器の中には有毛細胞という毛のはえた細胞があり、この毛と、これに覆いかぶさる膜との間にズレが生じて、有毛細胞の中の電気的状態が変わります。この電気的変化によって、有毛細胞から化学物質が出て、聞こえの神経が活動し、音の神経信号として脳に向かって情報が送り出されるのです。
この有毛細胞のうちコルチ器の内側を1列に走る内有毛細胞は約3,500個あり、音の知覚に主役を演じ、聞こえの神経が密に連結しています。一方、コルチトンネルの外側に3列に並ぶ外有毛細胞は約12,000個ありますが、従来その機能は不明でした。しかし、近年の研究で、これらの外有毛細胞は音の入力に対して伸び縮みして、能動的に音の感知に関係することがわかってきています。また、内耳のコルチ器はリンパという液体のなかにありますが、この液体、特にそのうちの内リンパといわれる部分はカリウムが多く電気的にエネルギーの高い状態になっており、これが振動の電気的変換のエネルギー源として使われています。このシステムを維持しているのは血管条というコルチ器の外側の部分で、これも聞こえには大切な役割を果たしていることになります。

 

図2

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では、どのような時に内耳の働きが悪くなって難聴になるのでしょうか。ひとつには、血管条の働きが悪くなると、コルチ器で振動が電気的変化に変換できずに難聴になります。しかし、この変化はうまくすると、もとに戻るとされており、治療によって回復できる可能性のある難聴です。一方、有毛細胞自体がこわれても難聴になります。有毛細胞は、カエルなどでは再生することがありますが、ほ乳類では原則として一度こわれると再生しないことがわかっています。例えばウイルスや髄膜炎のバイキンによって内耳に炎症がおこったり、事故で頭を強く打って内耳の骨が割れたり、内耳への血管がつまって血波の流れがとまったりすると、有毛細胞がこわれて難聴になります。有毛細胞がこわれて溶けてしまうと、これによる難聴は二度と回復しません。このような細胞の障害が内耳で広がると、全体として難聴が重くなり、ついには全く聞こえなくなる場合もでてきます。

 

 

 

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