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1. コトバの聞こえのしくみ

 

1)外耳、中耳と難聴

我々は音を耳で聞きます。この耳はどのような構造になっているのでしょうか(図1)。

耳の入り口、いわゆる耳の穴は、解剖学では外耳道といいます。この外耳道の長さは約3.5cmで鼓膜という薄い膜に突き当たります。この鼓膜の厚さは0.1mm、直径は約8〜9mmです。この鼓膜より外側を外耳、内側を中耳といいます。外から入ってきた音はこの鼓膜を振動させます。鼓膜の振動は中耳にある耳小骨という3つの小さな骨を伝って、更に中へと伝えられます。ちなみに、この耳小骨にはそれぞれ名前があり、外から順につち(槌)骨、きぬた(砧)骨、あぶみ(鐙)骨といいます。これらの大きさは、複雑な形をしているので一概に言いがたいのですが、全体が、だいたい8mm以下で、太さは細いところでは1mmにもなりません。その重さは、つち骨ときぬた骨が28mg、あぶみ骨にいたっては3mg弱、つまり百分の3から千分の3グラム程度の非常に軽い構造になっています。外耳と中耳が、音を伝えるためにとても繊細なしくみになっているのが解っていただけるでしょう。

 

図1

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外耳道が先天的につまっていたり、あるいは耳垢で閉鎖したりしている時は、これを手術や掃除で開けてやれば聞こえは良くなります。中耳の病気は、抗生物質で細菌を殺したり、手術で中耳を掃除して、鼓膜を張りなおしたり、耳小骨を立て直したりすると、かなりの程度まで回復させることができます。特に、鼓膜や耳小骨を手術で立て直す手術を「鼓室形成術」といいますが、これにより聞こえを良くする事ができます。

中耳の病気で音を伝えるしくみが障害されて音が聞き難くなり(これを伝音難聴といいます)、必要な手術を行っても、さらに難聴が残る場合でも、外から入る音を大きくしてやれば、また音が良く聞こえるようになります。補聴器はこの様なケースで最も効果を発揮します。ここで、はっきりしておかなければならないのはこの様な伝音難聴では、補聴器を使っても、内耳に入る音の物理的な大きさは正常であるという事です。内耳は、あとで述べますが、音を感じて聞こえの神経の活動に変換する場です。ここが正常で、ここに入ってくる音の大きさが通常の範囲内なら、内耳では問題なく音が変換されるのです。つまり、外耳道や中耳の障害でおこる伝音難聴は、手術や補聴器で聞こえが回復できる、いわば「たちの良い」難聴といえるでしょう。

 

 

 

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