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はっきりとしないので、不快に感じるものなのです。補聴器は耳に合わせて選択し調節したものでなくては役に立たないのです。

 

【補聴器を買う前に知ってもらいたいこと】

補聴器を買う前に是非知っておいてもらいたいことがあります。本稿では高齢者が満足して補聴器を使うにはどのような手順が必要かについて、本院での取り組みを紹介しながら述べていきたいと思います。

まず最初に大切なことは本人に補聴器に対する関心を持たすことです。じつは、これが案外むつかしいのです。これには後から何度も出てきますが家族の協力が必要です。つぎは、補聴器について指導をしてくれるところを探すことです。補聴器についての相談は先ず耳鼻咽喉科医を受診することから始めてください。耳鼻咽喉科医は、先ず聞こえの不自由さについて色々と質問をします。聞こえの悪いのに気づいたのは本人自身か家族の方か、それはいつ頃のことか、どの程度聞こえないのか、どういう場面で不自由しているのかなどです。そして、耳を診察します。高齢者だからといって、必ずしも老人性難聴とは限りません。耳垢が詰まっているだけかもしれません。だから先ず外耳道や鼓膜を診察して病気がないかを調べます。耳垢を除去することにより聞こえが良くなることもあります。そして次に、聞こえの検査をします。きこえの障害の原因は何なのか、程度は軽度なのか重度なのか、高音と低音のどっちが聞こえにくいのか、言葉の聞き分けはどのくらい出来るのか、などを調べます。これにより、難聴の原因が治るものか治らないものかを診断します。治療によって聞こえが少しでも良くなるのなら治療をします。

 

【補聴器の相談には時間がかかる】

その後にするのが補聴器が必要かどうかの検討です。本来、補聴器が必要かどうかは、本人や家族の希望が最優先するものと思いますが、補聴器を希望される方の中には、医学的に補聴器が必要ない場合や、効果が期待されない場合があります。このような場合には医学的なガイダンスが必要です。これとは逆に、補聴器が必要と判定した場合、まず医師が行わなくてはならないのが、補聴器についてのガイダンスです。補聴器を必要と判定した根拠、補聴器装用の意義、補聴器装用の効果と限界等について十分に時間をとって説明することが必要です。今、医療の世界で重要とされているインホーム・ド・コンセントが補聴器の場合にも必要です。高齢者には、家族の方が是非補聴器をと希望されていても、本人は聞こえにくいことを自覚せず補聴器使用を拒まれることがしばしばあります。こんな場合でも、家族に勧められて少なくとも我々のところまで相談に来られたのです。このチャンスを生かして本人に補聴器を使用する気になってもらうようにするのは、対応する医師やスタッフの努力にかかっています。高齢者にとって補聴器装用はリハビリテーションなのです。医師やオージオロジスト、家族の役割が何よりも大切です。

このように高齢者の補聴器の相談には時間がかかります。高齢者に補聴器を上手く使ってもらうためには生活状況を知ることが大切です。独居か家族と同居か、何か仕事をしているのか、社会的な活動をしているのか、どのような趣味を持っているのか、どのような場面で使用したいと思っているのか、などは重要な情報です。また、補聴器を今までに使った経験があるのか、補聴器に関してどのような印象を持っているのか、箱形、耳かけ形、耳穴形など補聴器の形状に希望があるのか、なども聞きます。高齢者は高齢になるに従って聞き取りが極端に悪くなっ

 

 

 

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