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てきますが、純音聴力の低下程度は比較的軽いので障害者福祉法の対象になる人は少なく、福祉制度による援助を受けられない場合がほとんどです。福祉制度に関して詳しく説明するとともに、予め、補聴器購入の予算についても確認しておく必要があります。

 

【補聴器のフィッティングには検査が必要】

次に必要なのが補聴器フィッティングの為の検査です。ここで本院で行っている検査について簡単に説明します。先ずきこえの状態をSPLオージオメータを用いて測定します。これはイヤホンによる検査で、音圧単位が通常の聴力検査を行うオージオメータの場合のヒアリングレベルと異なり、補聴器の特性測定器の音圧単位と同じSPLで表示される利点があります。測定するのは、原則として最小可聴閥値と不快閥値です。次にスピーカ法を用い音場でことばの聞き取り検査をします。場合によっては最小可聴閥値もスピーカ法で測ることもあります。これらの結果を参考にして、適当と思われる補聴器を選択し、調整します。

次に、この選択した補聴器を装用しての検査が必要です。先ず本人に聞こえの印象を聞きます。聞こえの状態、周囲の音が響かないかどうか、自分の声がどう聞こえるかなどです。付けた瞬間から目を輝かせて「良く聞こえます」と嬉しそうな表情をする方から、「付けても付けなくても一緒です。」と素っ気ない方、「うるさいだけです」と不満顔の方まで様々な答えが返ってきます。本人の印象だけでなく補聴器の装用効果を客観的に確かめる必要があります。本院ではスピーカ法を用いて装用効呆を調べています。先ず、装用閥値を測定し、非装用時の閥値と比べてみます。次に装用時の語音弁別能力を測定し、やはり非装用時と比べます。この語音弁別能力を肉声で行う場合もあります。これらの結果と、本人の満足度を参考にして、必要に応じて再調整を繰り返し最良と思われる補聴器を仮決定します。

 

【補聴器の効果は家庭で確かめることが必要】

補聴器の善し悪しは、ちょっと付けてみたぐらいでは判断できません。日常生活の中で、しばらくの間使用してみる必要があります。補聴器の使いはじめは、まず、静かなところで、親しい人と、一対一で、正面からゆっくりとはっきりと話してもらって、補聴器で聞き分ける練習を行い、少しずつ慣らしてもらってから、数人の会話に加わったり、補聴器をつけたままで外出してみたりと、段階的に練習してもらい、装用時間を長くすることが必要です。そのため、本院では仮決定した補聴器を2週間から1ヶ月試聴してもらっています。試聴に際して、高齢者の場合には、補聴器の付け方の練習と取り扱い方の指導が必要です。高齢になるにしたがって、自分の外耳道の位置が分からない場合が多くなり、補聴器の付け方の練習にかなりの時間を必要とします。
どうしても試聴用の補聴器の取り扱いが上手くできないようなら、取り扱いがより容易な補聴器に機種を変更する場合もあります。試聴の間は、ボリューム(利得調整)は動かないように止めておき、スイッチの「入」と「切」、電池の入れ替えのみについて指導するようにします。これら補聴器の取り扱い方については、『補聴器の上手な使い方』という小冊子を作成し読んでいただくようにしています。更に、試聴結果を知るためにアンケート用紙を渡します。アンケートの内容は、一日の使用時間、使用した場所、さまざまな場面(一対一の会話、数人での会話、10〜20人ぐらいの会議での会話、講演会での演者の話、食事中の会話、テレビの音声、電話での会話)での聞き取り具合、自分の声や、食器のふれあう音、紙のふれあう音等の感想、また、補聴器装用による耳の閉塞感や、痛み、かゆみ、頭痛など、更には補聴器の取り扱いの容易さ等、さまざまな項目があります。

 

 

 

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