補聴器の改良も上記の点を意識して非線型増巾でうるささをおさえたり、子音の強調をするよう考えられているが、基本的には音を大きくして無理に内耳を働かせるという点には変わりはない。従ってそこに補聴器の選択の問題が感音難聴者には生ずる。
その点からすると別項での内耳機能をパスして直接に聴神経を駆動する人工内耳は画期的な方法といえるが、その適応については充分考慮されなければならない。
近年デジタル補聴器という名前がおどっている。これも別項で触れるであろうが、音をデジタル化する利点は音質が良いということではなく、音を意図的に操ることが容易であり、それによって弁別能を向上させる可能性を有するものと考えた方がよい。
5. 難聴への福祉・補償制度を知ろう
聴覚は動物にとって大切な一つの感覚であるが、人間にとっては“聴く・話す”という社会生活に重要な機能を侵すことで難聴は音声言語機能と共に身体障害者福祉法にその障害を認めている。障害者として認定された場合に手帳交付、補聴器交付のみならず自治体により異なるが、きめ細かい各種機器を含めて補償がなされている。
ただ福祉は行政による制度に関わるだけのものではない。地域の難聴者のための難聴者自身の活動団体から、支援組織としての手話、要約筆記のボランティア活動など近年それらの活躍にはめざましいものがあり、孤独になりがちの難聴者を支えている。難聴の障害をのり越えクォリティ オブ ライフ(QOL)の質を向上させることが大切であろう。
介護保険制度が近く発足するが、福祉と医療の緊密な連携が求められる。福祉が人の幸せを意味するなら医学も福祉を究極の目標とする学問でもある。