日本財団 図書館


4. 補聴器は何故役に立ちにくいのか。

 

今日の補聴器は内部に色々の工夫がなされているが、一口にいえば音を大きくして耳に入れる機械であるといえる。

先述の難聴分類での伝音難聴では音が内耳に充分伝達されない為の難聴であり、ほぼ補聴器で満足される結果が得られる。一方感音難聴、その大半は内耳の障害にあるが、内耳では音という振動を捉える感覚細胞があり、それが刺激を受けて聴神経にリレーするわけだが、この感覚細胞の脱落で難聴以外に色々と厄介な現象が現れる。

 

表3

感音難聴耳の特徴

024-1.gif

 

補聴器の改良も上記の点を意識して非線型増巾でうるささをおさえたり、子音の強調をするよう考えられているが、基本的には音を大きくして無理に内耳を働かせるという点には変わりはない。従ってそこに補聴器の選択の問題が感音難聴者には生ずる。

その点からすると別項での内耳機能をパスして直接に聴神経を駆動する人工内耳は画期的な方法といえるが、その適応については充分考慮されなければならない。

近年デジタル補聴器という名前がおどっている。これも別項で触れるであろうが、音をデジタル化する利点は音質が良いということではなく、音を意図的に操ることが容易であり、それによって弁別能を向上させる可能性を有するものと考えた方がよい。

 

5. 難聴への福祉・補償制度を知ろう

 

聴覚は動物にとって大切な一つの感覚であるが、人間にとっては“聴く・話す”という社会生活に重要な機能を侵すことで難聴は音声言語機能と共に身体障害者福祉法にその障害を認めている。障害者として認定された場合に手帳交付、補聴器交付のみならず自治体により異なるが、きめ細かい各種機器を含めて補償がなされている。

ただ福祉は行政による制度に関わるだけのものではない。地域の難聴者のための難聴者自身の活動団体から、支援組織としての手話、要約筆記のボランティア活動など近年それらの活躍にはめざましいものがあり、孤独になりがちの難聴者を支えている。難聴の障害をのり越えクォリティ オブ ライフ(QOL)の質を向上させることが大切であろう。

介護保険制度が近く発足するが、福祉と医療の緊密な連携が求められる。福祉が人の幸せを意味するなら医学も福祉を究極の目標とする学問でもある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION