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ポゴ(ポゴII):ハーフゲインが基本になりますが、語音弁別への貢献度の少なさや高音域へのマスキング効果を生じる低域の利得を、250Hzで-10dB、500Hzで-5dB小さくします。また、65dB以上の聴力レベルの人の場合には、ポゴでの値に(聴力レベル-65)/2の値を加えた値を挿入利得とします(ポゴII)。

AI(Aided Articulation Index:明瞭度指数):補聴器装用時の明瞭度指数は、話しことばが増幅されて、どの程度ききわけられるようになるのかを定量化したものです。1mの位置で普通にしゃべった話しことばが全てききわけられる状態を1,全くわからない状態を0として、増幅された話しことばがどのくらいきこえるかを0〜1の数字で表します。各周波数毎の明瞭度への貢献度、および補聴器装用時の開値と音声の平均レベルとの比較により得られる話しことばのきこえる割合をもとに、定量化します。

 

しかし、これらはあくまでも推定値ですので、そのままで補聴器の特性の調整は終わりというわけではありません。補聴器装用時にこちらが目標として設定した音の増幅効果が得られるかどうかを実際に装用者の耳を介して繰り返し検査し、目標値にあった特性へと調整されていきます。こうして、必要な増幅を十分に満たせて、装用者のニードに応じられる補聴器の仮の選択・調整がなされます。その際には、先に述べたように、装用者にも音の好みやききやすさがありますので、メーカの(音の質の)違う補聴器を何台か用意して比較聴取することも大切です。

さて、実際の処方的手順に基づく調整のしかたは、2通りに大別できます。一つは、実耳挿入利得(インサーションゲイン)を測る機器(実耳特性測定装置)で実際に装用者の耳に当の補聴器を装用して測定する客観的な方法です。もう一つは、カプラでの値に補正値を加えることでインサーションゲインを推定しようとするものです。この場合は、平均的な値を使用しますので個人差への考慮が全くありません。こうして基本的な周波数特性などが設定されていきます。

 

(4)補聴器の装用試行的手順

こうして、ある程度補聴器が決まり、利得も理論的に求められたら装用試行的手順へ入ります。先ずは、補聴器装用時の開値を検査します。ここでは装用時の開値と話しことばのレベルを比較することにより、さらに調整をし、話しことばが十分にきこえるようにします。あわせて、補聴器装用時の関値と裸耳の関値を比較することによって実際の補聴効果(ファンクショナルゲイン)を確かめます。この場合には、人の判断を介すると同時に、刺激の提示間隔が5dB単位ですので誤差が大きくなります。

次いで、補聴効果を調べます。話しことばがどのくらいききわけられやすくなったかを、単音節や単語・文などを用いて評価します。必要ならば、騒音の中でのききとりの力も評価します。この他、うるささや補聴器装用時のラウドネスの評価などもあわせて行うこともあります。その上で、補聴器を貸しだし、実際の日常生活場面で使用してもらい、その結果に基づいて繰り返し調整をしていきます。その際、補聴器は聴覚活用レベルによっても調整が変わってきます。補聴器装用者が、今、何をどうききたいのかによって調整をする必要があります。こうして、補聴器装用者のニードを満たしつつ、補聴器の効果が十分に引き出せるように調整と補聴力ウンセリングを繰り返し行い、よりベターな方向に持っ

 

 

 

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