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摩擦攪拌溶接の溶着金属と熱処理と時効処理したアルミニウム合金(例えば200および6000シリーズ)の溶融部のHAZは、溶接後時効熱処理を施せばその強度は完全熱処理した母材に近いところまで回復する。ノルウェーの研究では6060合金T4の摩擦攪拌溶接では、溶接後5時間185℃で時効硬化させるとT5の強度の90%が得られたとの報告がある(表1)。

溶接根部を引っ張っての曲げ試験は溶着金属の強度と靭性上では引張試験より多く調べられている。2014A、5083及び6082の摩擦攪拌溶接は180°の曲げ試験でも破壊は生じない。

6mm厚5083O材と2014(T6状態での)の摩擦攪拌溶接についての疲労試験(引張の条件で)の初期の結果は、バラツキが殆ど無く、GTA及びMIG溶接によって得られたものよりずっと良好である。5083O材の摩擦攪拌溶接の疲労特性は応力比0:1で実施した母材のそれと匹敵する。摩擦攪拌溶接した疲労試験は片側からの1層盛りであったにも拘わらず、その結果は、板の両面から実施した2層盛リアーク溶接を指定するBS8118のクラス35を十分に凌駕するものであった(図4)。

 

5. 摩擦攪拌溶接の利点

5.1 製造コストの低減

溶接施工は簡単でエネルギー効率よく、高価な消耗品の必要が無いことである:

・電子機器を組み込んだ溶接機はエネルギー効率が良く(12.5mm深さの1相盛りでは600系合金の場合3kWのパワーで可能)、殆ど補修を要しないし、溶接器具と電力の他には消耗するものがない。

・高いレベルの溶接技能や訓練は不要である。

・溶接過程では溶接棒や被覆ガスは要らない。

・特殊の継手形状は必要ない。

・溶接施工直前に酸化膜を除去する必要はない。

・過程はすべて機械化されており、自動化作業の採用が可能。

・必要なら溶接作業は下向きから上向きまですべてのポジションが可能。

 

5.2 溶接品質

歪みが少ない、固体相溶接は現存の製品を改善することが出来、以前では不可能であった多くの新しい製品設計が生み出せる。アルミニウム合金の場合では、例えば:

・き裂発生が敏感で溶融溶接が出来なかった合金でも溶接が可能であること。

・熱処理合金でも高強度の継手強度が得られる。

・気泡が無いこと。

・固体相溶接の形成は合金の冶金学的特性を保持出来ると云うことであり、これには金属マトリックスの成分または急速固体化の過程で生じるものが含まれるが一方溶融溶接では都合の悪い冶金学的作用が生じることである。

・相異なる材料条件でも継ぐことが出来る。例えば、形材と鋳物、鋳物と鍛造品となど。

 

 

 

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