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摩擦撹拌溶接

1997.9.28

金子幸雄

 

1. まえがき

摩擦攪拌溶接とはFriction Stir Weldingの訳で、英国で開発された新しい溶接法である。この方法は鉄、アルミニウム合金など凡ての金属相互の溶接は勿論異種金属の溶接すら可能な画期的溶接法である。以下英国造船学会RINAが主催した「造船における軽量材料についての国際会議」の中のTWI(The Welding lnstitute)のJ.D.Russel他著「アルミニウム合金に対する溶接技術の開発」DEVELOPMENTS IN WELDING TECHNIQUES FOR ALUMINIUM ALLOY より要約して紹介する。

 

2. 摩擦攪拌溶接

摩擦攪拌溶接はこの10年間に発明、開発されて来た、適用範囲の広い有益な新しい溶接技術である。これまで気泡やき裂乃至は変形を生じなく、信頼の出来る溶接が極めて困難であった、多くの材料を簡単な方法で溶接が可能になったことである。

摩擦攪拌溶接法(TWIの発明、特許、開発になる)は普通の摩擦溶接から派生したもので、これは固体相溶接の特徴を長い突合せ並びに重ね継手(図1)に適用出来、これによって溶接後の変形が殆ど無いことである。さらに使用が簡単で、非常にコスト効率の良い機器で済むと云う多くの利点があるのである。

特に溶融過程で溶接が難しいことの多いアルミニウム合金継手を当初の目的にして摩擦攪拌溶接減少の開発と判定を行ってきた。

 

3. 摩擦攪拌溶接の方法と原理

摩擦攪拌溶接を形成するためには、突合せまたは重ね継手には図2に示すように裏当て板を用い、隣接する継手の面が離れないようにするため、クランプする。特殊形状のピンを付けた円筒形の肩状工具(これをショルダーと呼ぶ)を回転させ、これをゆっくりと継手ラインに押し込むのである。このピンの長さは溶接深さに必要なものとする。ピンが回転して、作業面に接触すると摩擦が接触点の材料を急速に加熱させ、その結果材料の機械的強度を低下させる。或力を加えるとピンはその動きに沿って材料をこね、押し出すこととなり、これはピンのショルダーが作業面にじかに触れるまで続くことになる。この接合点では、回転するショルダーとピンによって発生した摩擦熱がショルダーの下とピンの周りの金属に高温の塑性化層を作ることになる。当該ピースがピンの動きと反対方向に動くかその逆に動くと、塑性化した金属はピンの進行方向の前端で潰れ、機械的攪拌とピンの形状と回転方向による鍛造作用によって後端へ移動することになる。

この結果、攪拌する溶接器具が継手ラインの下方に動くに従って、その摩擦が接合部で器具の前面を加熱し、軟化した状態を作り出す。その結果継手ラインを潰し、酸化膜を破壊し潰れた金属を攪拌し、器具の後端で再び結合し材料を冷却

 

 

 

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