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両者共隅肉溶接が不要であるため、溶接歪みや隅肉溶接の溶着金属の形状による欠陥を避けられる利点を有するが、Bでは皮材にテーパを付して重量軽減を図ったものである。1)

 

3.パイ・セクション板部強度の考え方

アルミニウム合金船の大部分は高速艇の分野に属するから、船体強度上最も重要な部材は波浪中を高速航行時に衝撃荷重を受ける船底構造で、中でも船底外板の強度がその基本である。この衝撃荷重は高いピークを時間的、空間的に有する形状であることが知られているが、設計の便宜上等価応力を生じる一様分布荷重に置き換え、これを等価設計水圧として強度を評価するのが普通である。この考え方は国際的にも一般的であって、高速艇の構造設計者の周知していることである。
この設計荷重に対して、弾性的応力を算定して安全率を加味した許容値内に収まるよう板厚を決めるのが一般的である。各部の寸法記号を図2のようにすると、この場合には前報2)の計算法により固定端と中央部の応力が等しくなるように中央部板厚Tm、固定端部板厚To並びにテーパ部幅Brを決めれば良い。尤もこの計算はトライアルアンドエラーによるから多少の手間を要することになる。然し我が国の運輸省の規定である軽構造船暫定基準などでは平板の固定端の第1塑性関節を生じる塑性モーメントに対する安全率を1.2として板厚を求める3)ことになっているから前報2)のプログラムはそのままでは使用出来ない。よってこの基準による計算法を次節以下に紹介する。

 

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図2. パイ・セクションの寸法図

 

4.板の塑性ヒンジモーメントの計算法

普通使用されるパネルの縦横比は2以上であるから、無限帯板と見なされる。そこで両端固定の梁を考え、曲げと引張(膜力に相当)を受ける断面の塑性関節を形成するモーメント即ち塑性モーメントMpは図3に示すように、板厚とH、軸力をT、降伏応力または耐力

 

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よって各断面の板厚と荷重による引張力Tが求まればMpが得られ、外力による曲げMがこのMp以内に収まっていればよきことになる。運輸省の軽構造船暫定基準及び軽構造船基準(案)では耐力に対して安全率を1.2とする3)とあるからこれを基にした計算プログラムを作製したのが第1表である。

 

5.例題

(1) 軽構造船暫定基準による場合

船の長さ28m、排水量90t、チャイン幅5.4m、速力30ノットの沿海を航行区域とするアルミニウム合金製高速旅客船の船底外板の所要厚さを求めよ。

(ア) 設計水圧の計算

基準による算式1……

 

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