塑性設計の補足
塑性設計は構造物の強度を判定する有力な設計法で,構造物が崩壊する限界と対比してその安全度の評価に用いられ,特に不静定構造物の設計には威力を発揮した。
材料の応力-歪み曲線をその降伏点で均した理想化した関係に置き換え,或部材が降伏点に達しても,荷重保持力は塑性ヒンジとしてそのまま保持され,他の部材が降伏点に達し,構造物としての安定度が崩壊するまでは,その機能が保持されると云う考え方に特徴がある。この場合降伏点に達しても,歪みが増大しても降伏応力が保持されると云うことになる。実際は歪みが破断応力に達してしまえば破断が生じるから,その時点で構造物の破壊が始まることになる。そこで、破断するまでの歪みエネルギーと等価な弾性エネルギーを仮定して,これに相当する弾性応力(又は歪)に終点を置くと云う便法がある。これを等価弾性応力限界値と呼ぶ。左図のσEがこれを
示す。
左図で実線がモデル化した応力-歪線図としσyが降伏応力,εuが破断時の歪(伸び)の値を示すものとすれば,OABCDの面積がOEDOの面積に等しいとして、σEの値を計算するのである。
この関係から明らかなように,
より求まる。
例えば5083-O材の場合
σy=128N/mm2,εu=20%とすれば
σE=1079N/mm2となるが,
5083-H32材では
σy=220N/mm2,εu=10%,σE=1166N/mm2となり,
H32の降伏応力はO材の1.71倍であるが,等価弾性限界応力値では1.08倍に過ぎない。