ることは、前述の通り皮材(板部分)の重量軽減だけでなく、溶接歪み、溶接欠陥、応力集中などの欠点を完全に除去出来る利点があることは容易に想像出来ることである。問題はこの計算法で或船について最適な型材(特に板部の寸法)を算定したとしても、所要期間内に入手出来るかと云うことである。そこで、最適寸法を基準として、これに近い入手可能な形材を使用するのが実状であろう。今回のJISは7種に過ぎないから、これがこのまま最適またはこれに近いものとして採用出来るとは限らない。軽圧メーカには各社それぞれの製品があるとしても、同様な問題からは逃れられない。型鋼のように広範囲の寸法がJIS化されておれば有用ではあるが、形鋼とてもJIS規格のすべての寸法が常時製造されているわけでもない。してみれば、形鋼とアルミニウム合金形材とは程度の差はあっても、事情は似たりよったりではある。アルミニウム合金船の場合は、使用箇所によっては材質の違いも出て来るであろう。対象とする船舶の大きさによっても当然変わって来ることにもなる。従って、これらを勘案して、最も販路の広い寸法、材質についての押出形材のJIS化を推進して、ユーザーの需要に応えることが望ましい。特に小型船を多数建造している、小造船所のニーズの掘り起こしを実行して、今後の標準化の指針と致したい。
参考文献
1)金子幸雄,竹内勝治著:アルミニウム合金製漁船の建造技術,p.110,113,(社)軽金属溶接構造協会1994年10月刊.
2)金子幸雄:不等厚平板の設計法,長崎総合科学大学工学研究所所報第5号,1989年3月.
3)金子幸雄:不等厚板の設計法(その2),長崎総合科学大学工学研究センター所報第10号, 1996年3月.
4)(財)日本小型船舶工業会編:アルミニウム合金船建造技術指導書 設計編,P.145,1996年12月刊.
5)(財)日本船舶標準協会:船用アルミニウム合金押出部材の性能確認試験報告書, 1997年3月.
田中義照他:水圧を受けるアルミニウム合金製防撓板の強度,第69回船舶技術研究所研究発表会講演集, 1997.