互いに行き来を重ね、現実や行く末を話し合う中で、森林、林業、山村の苦悩などに、理解を深め合うようになった。やがて「自然を大切にしようという人こそ、山の実態、林業の現実を知らなければならない」「観念的ではなく、林業の現場に足を踏み入れ、その実態に肌で接することが大切である」と考えるようになった。それも、一度限りではあまり成果も望めないし、山は四季それぞれに変化があり、山仕事も変わるのだから、せめて年四回は足を運んでもらおうと、森の学校の構想が生まれた。
初めは、参加者のほとんどが森林、林業に対する知識を持っていないと見受けられたが、二回三回と森に入るにつれて森林の保護・活用と人間のかかわり、山を守ることの大切さやその苦労に理解を深め、予想以上に成果を収めることができた。
4. 秋田杉と技術を生かし
町では、町が造る建物は基本的に木造にすることを決めた。三年前に完成した新庁舎には、樹齢二百五十年の天然スギ丸太を使用したのをはじめ、秋田杉をふんだんに活用し、職員の事務机も地元木工業組合の協力ですべて秋田杉製にした。見学者からは、さしずめ、秋田杉の博物館と評されている。
また、デイ・サービス機能を持つ地域集会施設「杉(さん)ホールひびき」は、天然秋田杉の産地にあって、天然杉を全く使わず秋田杉一般材(並材)で、どのような公共建築物が可能かという提案型の実験的取り組みで建設されたものだ。このような活動の中で、民間の技術やアイデアが多数生まれ、木製サッシの製造に取り組み始めるなど、民間にも新たな動きが出てきている。
町のこのような活動を、何かで聞いて、町に対する関心がいろいろな所から寄せられるようになった。なかでも私たちが注目しているのは、各地の消費者運動の中で住宅問題に携わっている人たちが、健康、環境との共生という視点から木造住宅に新たな光を当てはじめていることである。
さらに最近の動きとして、産地と消費地が手を結び、共に顔の見える形での木造住宅供給体制をつくろうと考える人たちが、新たなシステムづくりを提案してきている。
森の学校をはじめとする交流の実績を土台にして、互いにリスクを負いながら、新たな住宅建設の仕組みをつくり上げようという点で、従来の産直住宅より一歩進んだ形をつくれる可能性がでてきたように思える。
このような取り組みが、本町の林業・木材産業の零細性からくる諸問題を克服し、今後の林業振興につながることを夢みている。
参照:秋田調査資料4]5]6]
参照:秋田調査資料6]7]