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参照:月刊 地域づくり「木を利・活用した地域づくり」(1998,2特集より)

 

環境保護団体と森の学校開設

〜地域林業の再興を求めて〜 (二ツ井町産業振興課課長 松出俊一)

 

1. 森の恵みとともに

 

二ツ井町は秋田県の北部に位置し、県北部を縦貫する米代川が中心部を流れる町である。

町の中央部に、標高わずか三百八十七メートルの山であるが、樹齢二百年以上のスギの中に暖寒両植物が大量に同居している「七座山自然保護林」、北に世界自然遺産「白神山地」のブナ原生林、南に日本三大美林のひとつに数えられる天然秋田杉の美林がうっそうと広がっている「水沢杉群落保護林」が存在している。

このように本町は、天然秋田杉の宝庫仁鮒(にぶな)国有林をはじめ、白神山地に連なるブナを主体とする広葉樹と造林スギの三つの樹種によって発展を遂げてきた。

町の産業において、林業および木材の関連産業が占める割合は極めて高く、町の基幹産業となっている。これまでの歩みを振り返ってみると、最も特徴的なことは、針・広葉樹とも老齢過熟林の収穫量が大幅に落ち込み、前途はいわば風前のともしびとなっている。

とくに天然秋田杉は、減少の一途をたどって、秋田営林局全体でみると、今年度はわずか一万立方メートル、そして平成十九年度には五千立方メートルとなって、姿を消そうとしている。

こうした事情を背景に、国有林の合理化、木材産業の衰退が次第に過疎化を促し、若者を引きとめる有効な手段もなく、最盛期には二万三千人を数えた人口も、現在では一万三千人に減少。ほぼ同じ運命をたどっている農業とともに、町の活力は低下を続けてきた。

 

2. 樹高日本一(五十八メートル)の天然スギ

 

天然秋田杉の最大群生地水沢スギ植物群落保

 

護林のスギが樹高五十八メートルと日本一の高さであることが秋田営林局の調査で分かった。国内には樹高六十メートル以上のスギが四本あるとされていたが、今回の調査の結果、一本は風で倒れ、三本は最近の実測の結果、五十メートル前後だということが判明した。

保護林は十八ヘクタールに二千八百十二本の天然秋田杉があり、ほとんどが五十メートルを超え、樹齢は約二百五十年で、スギのほか、広葉樹やヒバなども生えている。

日本一と分かったスギは、高さ五十八メートル、直径百六十四センチで十五階建てのビルに相当する。

天然秋田杉の枯渇が叫ばれる中、秋田杉の故郷と自認している町民にとって、天然秋田杉のシンボルともなるスギの存在は、なにかと暗い話題の多い昨今、なんとも明るく名誉な話題であった。

 

3. 森林に若者の目

 

昨年の夏から、町と東京に本部をおく環境保護団体・日本リサイクル運動市民の会が共同で、「森の学校」(正しくは「森で遊び林業を考える学校」)を開設し、林業、山村、木材問題を学習している。

市民の会は、環境問題や第一次産業の振興などに積極的に発言を行うとともに、実践活動を展開する環境NGOで、各ブロックごとに事務局を設置し全国をネットワーク化。環境との共生、持続可能な社会の創造を基本理念に環境、食糧、健康問題に活発な提案活動をしている。

また、アトピーに関する相談活動にも積極的に取り組み、そうした立場から、健康と住宅の関係にも着目し、とくに木造住宅の健康維持機能にも強い関心をもっている。都市生活者の視点から日本の農山業、それを抱える農出村の現状に強い危機感を抱き、産地や生産者と連携しながら、厳しい現実の打開を目指して行動している団体である。

 

 

 

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