野鳥の識別だけがバードウォッチングの楽しみではないし、案内の全てではありません。名前や識別指導だけに終わらないよう、できれば、第3章「バードウォッチングの基礎」を参考に暮らしにも目を向け、第2章の「多様性」や「関連性」の視点での観察を心がけると、自然に親しむステップの中でも、「自然と人との共存」の考え方に結びついていきます。
野鳥の暮らしや自然の見方にしても、説明して教えるよりは、自らの体験として感じられるように、見せ方や説明のしかたを考えましょう。
案内の実践:ミソサザイ
ミソサザイ(『新・山野の鳥』28ページ)がさえずっていたら、その複雑な鳴き方を覚えてもらおうとするより、小さな鳥が全身で鳴いている姿を見てもらうようにした方が、印象が強いのではないでしょうか?雄は雌を呼ぶため、あるいはなわばり宣言のため、せせらぎの音に負けないように大きな声を出さなくてはならないという事情も、すぐに説明しないで、素晴らしいさえずりを堪能してもらってから、考えてもらう方が効果的ではないでしょうか?
案内の実践:カシラダカ
カシラダカ(『新・山野の鳥』22ページ)と出会ったら、地味な鳥の識別ポイントを説明する以上に、スズメサイズの小鳥がシベリア方面から海を越えて渡ってきたことを説明した方がインパクトがあるのではないでしょうか?渡り鳥は、国境を越えた保護が必要なことにも結びつきます。