「2)(a)」は、生態学の分野で自然保護の基礎といわれる生態系概念を意味します。具体的には「生産・消費・還元のサイクルを作る物質循環」「それを構成する食物連鎖や量的関係」「エネルギーの転換」「生態系の遷移」などで、これらの理解が「1)(b)」や「2)(b)」の人と自然の関係の理解を助けます。
自然の見方、捉え方は人によって違いますし、自然について、私達が科学で知り得ていることはわずかです。また、自然に親しむ行為それ自体が癒しの効果を持つともいわれますし、感性で楽しむには、あるいは美しさや素晴らしさを子供に伝えるには、必ずしも科学的知識を必要とはしません。
一方、客観的なものの見方として、また、自然保護や環境保全に取り組む際の適切な判断の拠り所として、自然科学は重要といわざるを得ません。「自然と人との共存」のためには、まずヒトとはどういう生物か、次に自然環境とはどういうものかを、自然科学の立場で見てみましょう。それは、生態系概念を理解し、地球生態系の一員である私たちの存在を認識するのに役立つだけでなく、バードウォッチングの楽しみを広げ、深めることにもなると思います。
2. 自然科学の知識
(1) 生命
生命についての学問的な定義は定まっていません。何を知っているべきかの前に、「いかにわかっていないか」を知るべきでしょう。
生命とは、『岩波生物学辞典 第4版』(1996年,岩波書店)によれば「生物の本質的属性として抽象されるもの」とあるが、続いて「以上によって生命の定義がなされているかには、なお問題がある…(中略)…現在では、生物を自動制御機械と類比することにもとづく新たな生命機械論も有力であり、それは有機体論とも関連づけられている」とあります。