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家主型管理者

公的セクターが「管理者」として港湾を所有し管理するが、多くの施設を民間セクターに貸し付けて管理者はいわばランドロード(家主又は地主)のように振る舞い、「運営」は民間セクターに任せるタイプである。荷役機械等の荷捌き施設や保管施設の整備まで港湾管理者が行うか、それを民間セクターに任せるかにより「設備付き」、あるいは「設備なし」のケースに細分することができる。前者は従来の区分でいわれているいわゆる「Tool Port」2(又は「設備付き家主型」)に、後者は「Landlord Port」3(又は「設備なし家主型」)にそれぞれ該当する。(巻末資料3参照)

インフラを管理者が整備(土地造成、係留施設整備等)したのち所有権を管理者が保持したままで、借り受け者(民間のターミナルオペレーター、船社等)に長期リースすることにより収益を得るタイプが典型的で、ドイツ(ハンブルク、ブレーメン等)、オランダ(ロッテルダム等)、ベルギー(アントワープ等)、米国のロスアンジェルス、ロングビーチ等がこれに相当する。この場合荷役設備等スーパーストラクチャーは借受者が整備する。(「設備なし家主型」管理者)

一方、港湾管理者がターミナルのインフラ及び荷捌き施設等のスーパーストラクチャーを整備・所有したうえでリースする「設備付き家主型」には横浜、高雄、釜山、マニラ、シアトル、ルアーブル、バルセロナ等があてはまる。(「設備付き家主型」管理者)

なかでも高雄、釜山、マニラ、ポートクラン、レムチャバン等において近年行われているコンテナターミナル開発がBOTにより整備されているという事実は、「定期借地権付与地主型」管理者の方向への動きを示している。(「定期借地権付与地主型」管理者へ向けての矢印で示してある。)

米国の港湾の中でもニューヨーク・ニュージャージー港やタコマ港のように基本的にはインフラを整備したうえでリースするが、これに加え、更にガントリークレーン等一部のスーパーストラクチャーを整備したうえでリースする場合もある。この場合は「設備付き」と「設備なし」の中間にレイアウトすることとした。

同様にポートクラン、レムチャバンについても「設備付き」と「設備なし」の中間に区分した。その理由はクラン北港、クラン北/南港については、ターミナル用地(岸壁、コンテナヤード等)、建物(CFS等)はクランポートオーソリティからターミナル会社(KCT、KPM)への貸し付け(リース)、荷役機械等の可動施設はターミナル会社の自費調達(この場合、ポートオーソリティからの買い取り)とされ、最新のクラン西港については第一フェーズの12バースが管理者による整備後、ターミナル会社(KMT)への30年間のリース、第二フェーズの18バースがBOTベース(30年間)で整備されることとなっていること。レムチャバン港の場合には、ターミナルB1〜4まではインフラ(バースによってはガントリクレーン付きで)のリース、B5がBOT方式でインフラからクレーン等スーパーストラクチャまでを整備することとなっているためである。

なお、これらの「設備付き」と「設備なし」の中間にレイアウトされる管理者タイプには、家主型管理者であっても「設備付き」か「設備なし」か明らかでなかった港湾も含めている(モントリオール港、ハンプトンローズ港等)。

 

2『Port privatization . process, players and progress』 (Sidney Cass, 1996)

 

 

 

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