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定期借地権付与地主型管理者

包括的な港湾計画策定権と開発許可権を港湾管理者に残したうえで、民間セクターにコンテナターミナルの整備・運営を任せるのがこのタイプである。従来の区分でいう「権利交付のみ家主型」に対応する。家主型管理者との違いは、所有権の移転、港湾整備対象の範囲及びリスク・テイキングにある。定期借地権付与地主型管理者においては、契約期間中は財産(土地あるいはターミナル施設)の所有権は移転されたうえで、スーパーストラクチャーのみならずインフラ(岸壁等の基盤施設)部分から事業者自らのリスク・テイクのもとに整備する。香港のケースがこの典型である。香港政庁は港湾開発者を決めた後(落札者は開発権利金を政庁に支払うことになる。)に、開発者にターミナルの建設(埋立地造成、施設建設、機器調達等)を行わせる。埋立造成した土地は香港政庁に帰属させて、これを政庁から改めて借り受ける形をとらせる。開発者はターミナルの経営を行い、借受期間(50年間)中、政庁に土地借受料(課税評価額の3%)を支払うというものである。

このタイプでは、港湾管理者はいわば期限付きの開発権(土地利用権及び運営権)を借り受け者に付与する地主にたとえられる。付与されるコンセッションの内容によって様々な形態があり得、BOT (Build Operate Transfer) もその一形態と位置づけられる。うまくコントロールできれば民間セクターの資金を活用した港湾開発が可能であるということで近年ターミナル単位でよく見られるようになった管理・運営形態である。

バルボア、クリストバル港(パナマ)の場合は国が民間セクター(香港のハチソン・インターナショナル・ターミナルの100%子会社)に両港のコンテナターミナルのみならず、ROROバース、旅客ターミナル、穀物埠頭、一般貨物取り扱いバース及びそのためのインフラ並びに施設等の開発、建設、運営、管理、監督を行うという広範な内容を含む権利を25年間にわたり付与するというものである。アルゼンチン、ブラジル、メキシコでは90年代はじめに港湾分野における州や市への権限委譲、施設運営・サービス分野での民営化へ向けての政策転換が行われた。ブエノスアイレス港では埠頭ごとに民間セクターに25年間のコンセッション(港湾開発権限)が付与されており、国(経済公共事業省)は同契約の管理を行っている。サントス港の管理運営主体はサンパウロ州埠頭公社(公団100%出資の民法法人)であり、未だ民営化されていない部分については自ら荷役作業を行っている。コンテナターミナル部分については、落札した民間セクターに25年間の経営権を付与し、以前は公社が整備、所有、運営していたスーパーストラクチャーは経営権を付与された民間セクターが整備している(最終的には財産は連邦に帰属する)。メキシコでは主要港(マンサニージョ港含む)のコンテナターミナルについて運営に係るコンセッションが民間セクターに付与された。

 

 

 

 

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