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2-5 各区分の考察

 

設備/賄い付き家主型管理者

公的セクター(国、政府機関、公社等)が計画、施設整備、所有、運営までの全てを行うタイプを指す。計画から荷役まで全てが港湾管理者によって行われるという意味ではService (Comprehensive) Port1(巻末資料3参照)である。

シンガポールのほか、バンコク(タイ)、シアヌークビル(カンボジア)、ムンバイ(インド)、ドバイ(UAE)、ハイファ(イスラエル)、アカバ(ヨルダン)、アカフトラ(エルサルバドル)等の港が代表的である。

中でもシンガポールについては、PSAコーポレーションは現在100%政府保有の持株会社であるが数年後には株式の一般公開が予定されているので、その場合には「持ち家型」管理者に分類されることになる。(図表2-4の波線矢印参照)

なお、荷役作業の一部を民間に委託している場合も「設備/賄い付き家主型」に含めることにした。これは家主型への移行過程にあるものとも捉えられる。

海口(中国)、ホールファッカン(UAE)、キングストン(ジャマイカ)、プエルトカベジョ(ベネズエラ)、パルバライソ(チリ)等がそれに該当する。チリの場合、80年代の一連の改革により、チリ港湾公社(EMPORCHI;運輸通信省管轄)の沿岸荷役独占権が廃止され、同時に荷役部門が民間セクターへ開放された。EMPORCHIは人員削減や所有する多くの荷捌き・保管施設の売却を行い、その主たる業務を港湾管理、港湾計画策定、基幹施設の運営、港湾活動に伴う民間企業の業務調整等に絞り込むことになった。また、港湾施設に対する投資も民間セクターに開放された。国営港において基礎インフラ上の構造物への民間セクターによる投資がある程度みられるようになる一方で、港湾運営の分野でも民間セクターの参入がかなりあるようである。港湾のインフラと土地を残してその他の財産所有権と港湾運営権が国から州へ委譲されているベネズエラの場合は、実際の運営は港湾管理組織が行っている。管理組織の形態には自治組織によるものからコンセッション付与により民間企業によるものまで様々であるが、プエルトカベジョ港では自治組織(港湾自治機関)によっている。この場合全ての荷役作業は民間企業が実施している。とくにバルパライソ、プエルトカベジョ、キングストン等については、図表2-4上ではより家主型に近いところに位置づけたうえで、家主型管理者方向への波線矢印を入れた。

このタイプに属しながらコンテナターミナル施設をBOT(Build Operate Transfer)、JV(Joint Venture)等の形で民間資本主導により整備する計画をもつ港湾も増えつつある。タンジュンプリオク(インドネシア)、サイゴン(ヴィエトナム)、コロンボ(スリランカ)、上海(中国)等がそれである。これらは区分上やや家主型に近いところに位置づけられることになる。図表2-4で、「定期借地権付与地主型」管理者の方向への波線矢印をいれてある。

 

1『Port privatization・process, players and progress』 (Sidney Cass, 1996)

 

 

 

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