表10.3が示しているように、既存の条件でバイオ燃料を使用することから引き出せる、顕著な環境面の利益はありません。当然のこととして、最大の効果は都市中央部において、都市交通のバスやトラックにバイオ燃料を使用することから生み出されるでしょう。我々はまた表10.3から、ガソリン、ディーゼルおよびバイオ燃料の間の環境コストの差は実際上は小さいものであり、我々は伝統的なタイプの自動車の一層の技術開発を期待すべきであるということを読み取ることができます。しかしながら、バスや他の大型都市交通の場合は、将来的に顕著な環境面の利益が存在しています。たとえば、バスについては今ディーゼルからエタノール走行に切り替えることで得られる環境面の利益は、これらの計算を前提とすれば、小都市交通で約0.34クローナ/km、大都市交通で約1.26クローナ/kmでしょう。この環境面の利益が将来的にはより小さくなるにもかかわらず、それは依然として重要です小都市交通で約0.18クローナ/km、大都市交通で約0.63クローナ/km。
当然このタイプの計算にはいくつかの単純化や雑な仮定が入り、このため社会に対する経済的利益の絶対的な測定とはいえません。しかしながら、この計算は環境の利益の規模の程度に関するラフな指針として利用でき、どのような自動車の部門において経済全体の利益が燃料を置き換える戦略に対して最大となるか、ということを示すことができます。この計算はまた、健康と環境に関する地方と地域への影響のコストの規模の程度が、地球の環境への影響の推定と比較して、比較的小さいものであることを示しています。
CO2の削減(前章に従い価格付けすることができます)からの利益を、地方の雇用への影響や、たとえばバイオガスの原材料の保管の潜在的コスト等と一緒にした時、地方および地域の環境への影響の評価は、総コスト分析の中で依然として重要な役割を演ずるでしょう。
経済収支
さまざまな措置(バイオ燃料の導入にあたって補助金をつけるとか、あるいは何もしないといった)の間の国民経済的なレベルでの収支に関して、相互に関連したさまざまな措置に関係づけられる利益とコストの場合と同様に、その長所と短所を均衡させるためのひとつの試みがなされています。もしこれが可能であれば、すべての影響を金銭価値に転換することが概して現実的です。そのような手続きは必ず多くの単純化を含みますが、これが正しく機能すれば、代替燃料戦略が社会に対しどのような影響を持っているかについて示すことができます。それはまたコストと利益の関係とそのマグニチュードの規模を示すことができます。すなわち、何が大きくて、何が小さいかということを示します。
政府がバイオ燃料の導入のために代替燃料戦略に焦点をあてるようKFBに指示した時、経済への影響に関する特別研究が行なわれました(KFB,NUTEK,SIKA,1997)。図10.2.は、ガソリンとアルコールの低い混合の経済への影響が、社会がどのような価値/価格を温室効果の影響に置くか、およびエタノールのためのどのような生産コストが達成可能と信じられているかにより、どのように判定されるかを示しています。バイオ燃料の分野における経済全体の分析に関連した可能性と問題点に関する、さらに拡大した理論的な分析がまた、KFBのシステム研究報告書の中で提供されています(Stener T、1997)。