政府はまたエタノール生産者に、1980-1985年の期間を通じ低金利でのローンの形で資金的優遇措置を実施しました。合計でこれらのローンは、必要な投資額の29%に相当する20億ドルに達しました。1980年代の初期に、世界銀行は2億5千万ドルのローンを供与しましたが、このことはこのプロジェクトを国際金融市場において信用のある地位に置くものでした。このブラジルの計画は、従来の燃料(ガソリン)を大規模かつ商業的にバイオ燃料と置き換えるという目的による、かつて例をみない大規模な実験です。ブラジルの計画がスウェーデンの計画とはやや違った条件に基づいているとしても、それはなおスウェーデンにとっていくつかの貴重な教訓を持っています。
アルコール推進計画の主要な問題点は、燃料と自動車への需要と供給のバランスです。繰り返される危機が起きました。エタノール・マーケットは1981年に暴落し、1989年に再び暴落しました。1979年には新車の100%はガソリン・エンジンでしたが、1987年にはすべての新車の94%が純粋アルコール(E96)で走行し、1995年にはすべての新車の95%がエタノールガソリン燃料混合物(E22)で走行します。これらの大規模な変動は当然最も不幸なことでした。
転換作業を通じて、多くの技術的な問題が、特に純粋エタノールの供給と自動車での使用の両方の場合に関連して材質の腐食により発生しました。しかしながら、これらの問題は現在では解決されているとみられています。現時点では、400万台以上の車がE96で走行しており、残り500万台はE22で走行しています。全体として、このことはエタノールがガソリン・エンジン自動車で消費されるすべての燃料の半分に相当するということを意味しています。
アルコール計画が導入された時、その意図は大型自動車もまたエタノールで走行すべきであるということでした。Scania社はこの開発作業に参加しましたが、これは技術上および資金上の理由で挫折しました。しかしながら、ブラジルは大型自動車もまたエタノールで走行することを可能にする見地からのプロジェクトを再スタートさせるための新たな関心を示しました。実際はディーゼル燃料の使用を減らすことに大きな関心があるということです(図8.1参照)。
初期の段階を通じ、アルコール推進計画は生産面および消費面の両方に多くの補助金を
出しました。しかしながら、現在ではこれらの補助金のほとんどは廃止されています。
米国
米国の燃料マーケットには現時点で7000以上の登録された燃料がありますが、ガソリンとディーゼルがマーケットの大半を占めています。米国は現在以前にもまして外国の石油資源に依存しており、このことが代替燃料の開発を推し進める要因となっています。
米国人は、代替燃料について、現時点で輸入されている原油のような燃料や原材料を置き換えることができる国内燃料と考えています。供給の安全保障とは別に、環境面の配慮もまた次第に焦点となってきています。米国人が代替燃料やクリーンな燃料を導入することでまず最優先に減らしたいと考えている環境面の効果は、低いレベルのオゾンの形成です。このため、彼らが減らすことに努力している排出ガスは、主に窒素酸化物と炭化水素です。
エネルギー供給と大気の環境は多くの法律で規制されています(たとえば、大気浄化法、エネルギー政策法、気候変動行動計画、陸上輸送の効率化に関する法等)。しかしながら、実際上これらの法律は、政府と自動車業界との間の開発契約や、投資のための補助金、および公共の自動車調達計画における特定の台数の代替自動車への公的な需要などによる、他の措置と相互に作用する管理を意味しています。