高い窒素酸化物の排出が、ディーゼル・エンジンに関する最も深刻な問題のひとつです。エタノールが燃料として使用された場合、これらの排出ガスは通常ディーゼル燃料よりも約30%低いものとなります。もし、EGRのような先進技術が使用された場合、窒素酸化物の排出をさらに減らすことができます。
ディーゼル・エンジンに関する他の主要な環境面の問題は、その高い粒子状物質の含有です。しかしながら、ディーゼル・エンジンはこの点に関しても、エタノールを使用することにより改善することができます。これは燃焼に際してススを形成しないというアルコールの特異な能力によるものです。
純粋なエタノールから成る燃料は非常に低いセタン価(着火能力の尺度)しか持たず、このためオットー・エンジンに最も適している訳ですが、ディーゼル・エンジンの着火性能を改善するために添加剤が必要です。Avocetとして知られるKFBのバイオ燃料プログラムの初期の段階を通じて使用された添加剤は、硝酸塩ポリエチレン・グリコールに基づいたものでした。この硝酸塩エステルは刺激性と毒性があり、酸性pH値を生み出します。テストされた他の硝酸塩エステルも同様の問題を発生させました。これらは腐食性があり、このため潤滑に関する技術上の問題を引き起こします。
Avocetの生産は継続されなかったので、スウェーデンのエタノール自動車フリートは現在Beraidという名称の、他の添加剤を使用して走行しています。この添加剤は純粋なポリエチレン・グリコールであり、毒性はありません。
しかしながら、これらのより最近のタイプの添加剤でさえまた、いくつかのケースでは沈殿物や未だ十分に解決されていないその他の技術的問題点に関連してトラブルが生じることがありました。しかしながら、無視されがちな問題点は添加剤の使用は燃料コストを著しく上昇させるということです。着火促進剤を非常な低コストで生産しようという動きはみられないので、他の代替策が開発される必要があります。ディーゼル・タイプのアルコール・エンジンと点火プラグおよび予熱プラグを組み合わせることで成功した事例が外国にあります。
1)排気ガス循環(EGR)はオットー・エンジンでは広く使用されていますが、ディーゼル・エンジンに関しては同じ程度にはまだ使用されていません。
ガス・エンジン
ガスを動力とする自動車は新しいものではありません。世界中には天然ガスで走行するガス自動車が百万台以上存在します。天然ガスとバイオガスを使用するエンジンもまたオットー・エンジンです。ガス・エンジンの主要な利点は、疑いなく、この燃料がガス状であるということです。燃料空気の混合はたとえばガソリンのケースと比較しはるかに良好であるため、排出ガスは低めの結果となります。