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もうひとつの深刻な問題点は燃料と空気の混合気が燃焼室内のピストンとシリンダ壁の間のすき間などに入り込み、燃焼しないことです。この問題に対処するための現在知られている唯一の方法は、シリンダー内への燃料の直接噴射です。

オットー・エンジンは通常高い排出ガスを生ずるため、もし排出値が低く抑えられるべき時には触媒がとりわけ有効です。触媒は十分に高い温度に達し、点火するために1〜2分を要するという問題点はよく知られています。排出ガスはまた始動時を通じ非常に高いため、この段階における排出ガスの割合は、しばしば全走行サイクルに関する総排出量の80%以上に達します。新しく開発された触媒は、いくつかの技術上の問題がなお解決されないままであるものの、通常の3元触媒に比べ著しく改善された特質を持っています。なかんずく、コストが低く抑えられています。

アルコールを動力とするオットー・エンジンはほとんどの部分でガソリンを動力とするオットー・エンジンと同じ問題を抱えており、またこれらのために開発された技術から恩恵を受けることができます。あるケースでは排出ガスが実際に改善することから、このことはアルコールがガソリンよりも相対的に長所を持つことの原因となります。

良好に機能する燃料-空気の混合により、アルコールを動力とするエンジンはガソリンエンジンより酸化炭素と炭化水素の排出が少なくなります。これはガソリンより早く、かつ、より安定した燃焼につながるアルコールの物理的および化学的特質によるものです。しかしながら、寒冷時始動と関連した燃料空気の混合は、主に高いガス化温度とより高い初期沸点のため、アルコールにとってより困難です。このため、寒冷時始動との関連でより高い酸化炭素の排出につながります。さらにこのことは燃料空気の混合のすべての改善は、ガソリン・エンジンよりもアルコール・エンジンに対してより大きな影響を持つだろうということを意味しています。

窒素酸化物の排出に関しては、主により低い燃焼温度のために、ガソリンよりもアルコールの方が低くなっています。約30%の削減が通常のレベルです。アルコールを動力とするオットー・エンジンはさらに有利な効果を持っています。つまりEGR1の効果は明らかにガソリンのケースより大きなものです。もしこの可能性がすべて利用されたら、窒素酸化物の排出はガソリンに比べ2分の1から4分の1低くすることができます。KFBのフリート・テストにも含まれた多くのFFV自動車で実施された排出ガステスト(第7章参照)から判断して、窒素酸化物を減らすこの可能性は利用されていません。アルコールに関するより低い排気ガス温度の結果として、触媒はエンジンにより近い場所に装着でき、このためより早く暖められ、排出ガスがより多く削減されます。

 

ディーゼル・エンジン

 

大型自動車のためのアルコール・エンジンは原則としてディーゼル・エンジン・タイプですが、その主な理由はその高い効率性にあります。少ない燃料消費量が、大型自動車の場合、伝統的に非常に重要な点です。

 

 

 

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