日本財団 図書館


ようになっている。それは、一人一人の状況に合わせてサービスを提供するためで、あまり細かい項目は不都合だからだと判断しているからだ。要介護状態は日々変わることがあるし、住宅状況、家族関係、隣人や友人などの人間関係、交通の便、買い物の可能性など、まさに一人一人違うわけだから、現場でその人の状況に最も適した対応方法を書き込むほうが確かに実践的である。グラズサックセ市のニーズ判定表では、高齢者自身に「私はなにができるか」という自主性を判断するための質問項目が注目される。高齢者の自立、自助を喚起する上で意義があるだろう。このニーズ判定表で注目される点は、対話を通じて高齢者自身で出来ることとできないことを明らかにし、在宅生活を維持するには、どのようなヘルパーの支援が必要かが合意形成できるようになっていることである。
グラズサックセ市だけでなく、他の自治体のニーズ判定表もかなり大まかにできているのは、ニーズ判定の目的がいわゆる客観的要介護度を調べることではなく、むしろどのように支援したら高齢者が安心して在宅生活を継続できるかという、すぐに始められる実践を目的としているからだろう。実際、どの自治体でもニーズ判定表の合意ができると、最初の約束時間から直ぐにサービスが提供される。ニーズ判定が終わると、担当の訪問看護婦が所属する在宅ケアチームのホームヘルパーたちに連絡をし、担当者を決める調整をすれば直ぐに開始できるわけだから、早い対応が可能なのである。
サービス提供の権限が、在宅ケアチームに分権化されていればこそできることなのである。今、ここで困っている要介護の高齢者を支援する制度に、無駄な待ち時間は許されないだろう。要介護状態は、早急に必要な対応が求められる点で癌や骨折などと似ている。日本の公的介護保険制度は、その点で多くの問題点を内包している制度だということができる。高齢者の生活維持を可能にするという視点が全くない。全国一律のニーズ判定表、コンピューター処理、速効性全くなし、では介護問題に対応できる体制ではない。しかも、基盤整備が不十分で、介護職など人的資源も極めて貧弱である。制度開始前に、抜本的な見直しの必要があるだろう。

尚、ホルベック市のニーズ判定表が他市より多少複雑なのには理由がある。この表は、高齢者住宅や、施設入所の場合にも使われるものだからである。グラズサックセ市のものは、ホームヘルパーだけに関するニーズ判定表であり、高齢者住宅や、痴呆性老人のグループホームなどへの入所におけるニーズ判定表は別にある。より重度な要介護者を対象にするので、そのニーズ判定表は4頁にのぼる。ただ、考え方はホームヘルパーの場合と同様で、いかにしてその人らしい生活が継続できるようにするかということであり、その実践的方策を探るために対話による合意形成型で判定が行われる。

現在のデンマークの老人ホームでは、高齢者の自己決定権を尊重して、生活関係のサービスを選択できるようになった。かつての老人ホームだと、入所すると何から何

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION