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まで無料であり、小遣いとして月額700クローネ(1万4000円)程度が支払われていた。そのかわりに、国が支給する老齢基礎年金は自治体の一般税源に入れられた。在宅の高齢者は健常、要介護にかかわらず老齢基礎年金を支払われ、そこから家賃や、光熱費、食費などを支払っている。施設に入所したからといって自立した社会人の決定権を奪うことはおかしいという考えから、現在では施設入所者も在宅の高齢者同様に、老齢基礎年金が全額個人に支払われ、そこから施設の家賃、食費などを支払う制度が導入された。

表6はホルベック市東地域の総合センター「ステンフスバッケン」入所者のサービスパッケイジと呼ばれるものである。各居室には冷蔵庫、調理台などがあるから本人あるいは家族が食事やコーヒーなど自分で作れば、当然費用を支払う必要はない。勿論、今までのように完全パッケイジで、2600クローネ余り(5万2千円)を支払っても良い。その場合でも、入院や休暇で不在になる場合は前もって報告しておけば、その分の支払は必要ない。
尚、入所者は家賃と光熱費として1000〜2500クローネほど支払うが(所得によって異なる)、老齢基礎年金しか収入がなく、蓄財が全くない場合でもとのリストにあるレベルの生活を自己決定で選択することが保障される。行政の事務は繁雑になるが、コンピューターの活用により殆どコストを上げずに、施設入所者の個別のニーズに対応する制度を導入したのである。デンマーク人の驚くべき特性は、「高齢者を中心にした福祉制度」という、多くの国がお題目で終わらせてしまうような理念を、文字通り実現することである。少なくとも理念を実現するために具体的で、実践的な努力を絶えず行ってきていることは歴史が証明している。それは、人権問題や環境問題でもそうであるし、次に記す公的サービスの品質管理にも言うことができる。

 

表6 ステンフスバッケンのサービスパッケイジ(入所者の各種サービス利用料:1998年)

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