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4.3 高齢者政策の民主化

 

1998年7月から施行された社会サービス法によって、全ての自治体は60〜67歳の早期年金受給者ならびに全ての67歳以上の市民の互選による「高齢者委員会」を設置することが義務づけられた。そして、自治体における全ての高齢者関係の政策はこの高齢者委員会に情報を提供し、意見を聞かなくてはならなくなった。高齢者の頭越しに政策展開することが出来なくなったのである。

市民参加を改革の目的の一つに据えていたホルベック市では、すでに1992年頃からこうした制度を導入し始めていた。こうした幾つかの自治体の実践から、デンマークの制度全体の民主化の必要性を政府が認識するところとなり97年12月法政化が行われたわけである。高齢者委員会の選出の仕方は自治体によって異なるが、ホルベック市の場合は、まず5つある地域総合センターごとに利用者委員会を選出する。委員数はそれぞれ9名で、任期は2年。再選は可能。この委員が中心となってそれぞれのセンターにおける活動プログラムの企画運営を行う。この活動プログラムには、リハビリや介護など、専門職によるものは含まれない。トランプ、ビリヤード、編み物、刺繍、新聞読み、木工、学習会、講演会、遠足などの社会活動である。

行政へのご意見番に当たる高齢者委員会は、利用者委員会の代表によって構成される。オーリュー島から1人、残りの4センターからは二人ずつ選出され、全員で9名になる。

ホルベック市では、民主化をさらに徹底するために、「不服取り扱い委員会」を設置している。この委員会の構成は、高齢者委員会の代表二人、市内の障害者団体の代表1人、そして行政からの代表二人の合計五名で構成されている。地域総合センターでは解決できない問題や、介護のニーズ判定に対する不満、ホームヘルパーなど職員が提供するサービスへの不満を、直接でも地域の利用者委員会を通じてでも訴えることが出来る。委員会は原因を調査し、市民の主張が正当かどうかを判断して問題の解決を図る。

こうした民主化の流れは、現在のデンマークでは全国的な広がりを見せてきている。行政サービスにおける市民参加は、市民の権限と責任を大きくし、成熟した民主社会への道のりのようである。1990年代に入って、保育園や義務教育の学校などでも、親が過半数を占める理事会が作られ、育児や教育方針への影響力が強まったことなどからもそうしたことが伺われる。

ホルベック市の高齢者委員会は、いままでにバスのルート変更や、バス停の位置の変換などを事業者に提案して実現したり、地域総合センターの入り口にポストの設置を、しかも車椅子で投函できる高さで設置することを郵便局と交渉して実現してきている。現在の大きなテーマは、元気なうちから移り住んむ高齢者のための共同住宅の

 

 

 

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