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第4章 自治体における高齢者政策:ホルベック市を中心に見る高齢者福祉制度改革

 

ホルベック市は首都コペンハーゲンから西へ60kmほどの所にある典型的な地方都市である。人口は3万3千人、市街地に2万人余りが居住し、残りが農村部と人口900人の島に住んでいる。老齢基礎年金を受給する67歳以上の人口は1998年には4171人おり全人口の12.5%である。国際比較の65歳以上にすると約15%の全国平均レベルで、半径20kmほどを商業圏とする商業都市だが、プラスティック工場などの製造業も少しある。教員養成学校や、公立の商業、工業、音楽などの専門学校などもあり広域地域の教育・文化都市としての役割も果たしている。ヨットハーバー、ゴルフ場、別荘地などもあって行楽の可能性もある。コペンハーゲン市までは、車でも国鉄でもちょうど1時間ほどなので通勤者が近年増えている。近隣の自治体からの流入を含めて、人口は少しずつ増える傾向にある。

議会構成は歴史的に社民系を中心とした革新連合が過半数を得ていたが、1995年から保守中道連合へと力関係が初めて変わった。現在の高齢者福祉制度は1989年から改革が行われてきたが、全政党合意の上での改革であるから、政権が変わっても政策に大きな変化は見られない。同市の中心となる高齢者福祉の政治的目標は「ホルベック市の高齢者が要介護状態になっても健常な市民と同等な市民生活ができるように、一人一人の個別ニーズに対応するサービス提供をして生活支援する」ことである。サービス提供の基本的考えは「自助に至るまでの援助」で、サービスが過剰援助にならないようにし、市民の自立自助の努力も期待している。

この政治目標を単なるお題目ではなく、実際に行うためにはホームヘルパー、訪問看護婦、高齢者住宅、老人ホーム(かつての個室を改造し、現在では高齢者住宅に準ずる居住性を確保)、デイセンター、リハビリ施設、補助器具、配食サービスなど福祉資源を十分配備しなくてはならないし、直接市民に接する職員がこの理念通りにサービスを提供できるようにしなくてはならないから、500人余りの職員組織としては極めて大がかりな事業と言える。特に一人一人の個別ニーズに対応するサービスをいかに実現するか、どのように個別のニーズ判定をするかは難しい課題である。なお、それについては後述する。

 

4.1 ホームヘルパー活動に見る要介護者の状況と制度改革

 

ホルベック市には、541名の高齢者福祉の現業職員がいるが、約300名ほどがホームヘルパーである。これだけの職員を配備していることから、ホームヘルパーが在宅ケアを支える重要な柱であることが分かる。

 

 

 

 

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