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ないとすれば、法律の書き方が曖昧であり、書き換える必要があるというのがこの人の主張である。判決は99年5月になる予定である。福祉サービス法は施行されてまだ新しいために、行政にとっても市民にとっても曖昧な部分がある。この裁判で問われているのは、自治体のサービス提供義務に対する法律解釈である。スキーベ市は、法解釈の問題で多くの自治体が困っていることから、この問題を示談にしないで裁判ではっきりさせることにしたという。
因みに、2週間に2時間のホームヘルパー派遣は、後述するホルベック市の例で見るように最も軽度の要介護者に属するが、問題は今まで数年に渡って提供していたサービスを今年になって引き上げることにしたことで起きていることだ。多産化によって保育、義務養育への対応が切迫しており、同時に後期高齢者の増加によって重度な要介護者が増加しているために、このようなサービス削減をスキーベ市議会は決定したわけだが、法解釈は建前で、本音の所では軽度な要介護者にはできるだけ民間サービスを自助努力で活用して欲しいということだろう。

尚、ホームヘルパー派遣会社は民間であるが、制度そのものは国の補助金があるから完全な民間制度とは言い難い。ただ、事業者は完全に民間であり、市民は自己負担があることから消費者として選択できることは確かである。市場経済のメリットを生かそうという考えが背後にある。公的セクターが大きいデンマークにおいて、このような民間を混ぜ入れるという新たな試みは注目に値する。この問題に関しては、最終章の市場経済と公的セクターとの共生で改めて論じてみたい。

 

 

 

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