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めて憲法が保障する平等を担保することが出来るわけである。北欧諸国にはみなこのような制度が導入されている。でなければ高齢化が進む地方、とりわけ僻地での高齢者福祉サービスのレベルは維持できない。僻地の住民の声は中央には届きにくい。声無き地方を差別したり、切り捨てるのではなく、僻地でも都市部とほぼ同等のサービスが保障できるように財政調整が行われているのである。

しかしながらサービスのレベルは自治体ごとに違う。施策目標や、優先順位などはそれぞれの自治体の議会構成によって異なってくるからだ。例えば、表4に見たようにグラズサックセ市とホルベック市では在宅ケアと施設ケアを統合化したが、コペンハーゲン市ではしていない。人口当たりの職員数も違う。もしサービスに不服な場合は、市町村の不服処理委員会に訴えることが出来る。それでも不服な場合は、県レベルの不服処理委員会に訴え、福祉サービス法に照らして市民の訴えに妥当性があるかを決定する。この決定は最終決定となる。

 

3.3 ホームヘルパー制度への不満に見る公的サービスと民間サービスとの共生

 

既に述べたようにデンマークの高齢者当たりのホームヘルパー数は、調べた限りでは世界で最も多い。これにもかかわらず、デンマークではまだ人手が足りないという不満が近年高齢者から出ている。後期高齢者が増加してきた結果、要介護度の高い高齢者が増加した結果、労働力をその人達に重点的に配備する必要が高まり、今まで提供していた掃除などの家事支援を引き上げる自治体が出てきた。それを不満とする高齢者やその家族、また高齢者の圧力団体などが報道を通じて社会問題化した。それに対し地方政治家は、介護分野のサービスレベルは維持しなくてはならないとしているが、掃除、買い物などホームヘルパーが行う生活支援的サービスは自己負担か、家族などの協力で解決すべきだと主張している。ヴィボー市(Viborg)という自治体が98年夏、250人余りの生活支援的サービスを実際に大幅削除した。それを機会に国、地方自治体、高齢者団体などを巻き込む大議論が展開されるようになった。福祉省は、サービスの削減は違法行為だとして介入をほのめかしたが、自治体は合法だと譲らず、むしろ国の介入は地方自治への違法行為だと主張した。99年2月上旬になって、スウェーデンが行っているように、家事支援的サービスを行政サービスからはずすか(スウェーデン型モデル)、あるいは豊かな高齢者には有料で行政サービスを提供にするかという二案が急浮上してきたが、まだ暫く議論は続くと思われる。2月中旬には、内務省(日本の自治省に当たる)が福祉サービス法に照らして違法であるとの判断を出し、ニーズ判定の見直しをするよう指示を出している。

 

 

 

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