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としては殆ど意味を持つとは思えない。日本ではまず今より遙かに大きな財源の確保を、国民的合意で達成できるかという問題から始めなくてはならない。

 

図13 高齢者サービス(現物給付)の国内総生産に占める割合(%)

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2.3 高齢者福祉従事者と制度改革

 

福祉従事者は、1992年頃までは高齢者福祉分野が一番多かった。それが1997年には保育を含む児童青少年福祉部門が高齢者部門より多くなっている。図3で見たように出生率が1984年より上がり始めたことに対する政策展開でこのような現象が起こったわけである。このように人口構造の変化により福祉ニーズが高まるとそれに合わせて臨機応変に政策展開できる、いわゆる小回りの利く行政の対応がこれにより分かる。租税負担と、それに対する満足度との相関関係がこうしたことからも理解できるだろう(図14)。こういう構造変革に対応できない政策展開だと、国民の不満は爆発するだろう。高負担高福祉を可能にする要件である。

高齢者福祉従事者は、現物給付の分野で働いているわけだが、1987年から97年までの10年間に7000人増加している。しかしながら図13で見たように、国内総生産に占める現物給付の割合は、1988年の2.38%から減少しており1996年には2.17%になっている。7000人分の人件費は確実に増えたはずであるが、こうした減少が可能になった背景には、高齢者福祉サービスの運用が、それまでよりも遙かに効率的に改革されたことが主要因として考えられる。具体的には、かつて予算や組織が在宅ケアと施設ケアとでは別々になっていて、労働資源の活用面で多くの無駄が存在していたものを、在宅ケアと施設ケアを統合化することによって効率的活用を可能にしたことだ。年間一

 

 

 

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