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ることにするが、ここでいう公的サービスとは警察、郵便局、税務署、福祉事務所、図書館、美術館、病院、家庭医、学校、保育園、ホームヘルパー、老人ホームなど広範な領域が含まれている。その、一般的な満足度である。

明らかに不満を抱いているのは8%で、非常に満足の9%に及ばない。さらに積極的に満足を示した人たちが63%にも上っている。こうした結果からデンマーク人は、日本人の多くが持つ通念に反して、租税の負担感は少なく、税による公的サービスに満足している姿を伺い知ることができるだろう。このことは、国民の負担感というのは、税率や、国民負担率というような数値だけで出せるものでないということを示唆している。負担感というものは相対的なもので、税率が低くとも、それに見合ったサービスが提供されなければ不満は大きく国民の負担感もまた重くなるだろう。日本はそういう国ではないだろうか?。そういうことをこの調査は教えてくれている。

本論に関係する高齢者福祉分野では、ホームヘルパーとプライイェム(特別養護老人ホーム)/デイセンターについて質問が出されている。調査に参加した1517人のうち、こうしたサービス利用者は、ホームヘルパーが146人、プライイェム/デイセンターが138人であった。この人達の評価は、いずれのサービスにも6割が満足しているが、不満足もかなり多い。ホームヘルパーでは18%、プライイェム/デイセンターでも15%が明らかに不満を持っている。これはかなり高い数値であり、98年2月に行われた総選挙の時も、高齢者福祉の充実が政策課題として論争された。デンマークでは、高齢者福祉は現在重要な政治課題である。

 

2.2 社会保障財政の構造と動向

 

高齢者福祉、年金、障害者福祉、医療など社会保障を運営するには極めて大きな財源を必要とする。それは租税方式を採ろうが、保険法式を採ろうが同じレベルのサービスなら必要な額はそれ程は変わらない。ただし保険法式は、保険にかかわる事務費がかかるのでその分割高になる傾向がある。いずれの方式にせよ課題は、その財源をいかに確保するかということと、集めた財源を目的達成のために効率よく活用するかということだろう。デンマークのように負担とサービス給付の間にバランスができていると感じれば、程々の満足感が国民の間に広がるだろうし、財源の効率的活用ができず、国民の負担感のほうが重くなりすぎると国民の不満は高まるだろう。デンマーク人の公的サービスへの高い満足度を理解するために、デンマークの社会保障財政の構造とその動向見てみよう。

デンマークの社会保障費の国内総生産に占める割合は、1984年から94年まで26%から33.1%まで上昇したが、以降減少してきている(図10)。これは、94年まで失業者

 

 

 

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