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いて提供されることが重要であるとしている。代替ケアサービスやショートスティ・サービスは高齢者とともに暮らす家族にとって重宝されてきたが、その他にもどのような援助ニーズを家族がもっているのか、潜在的なニーズの把握を家族や近親者との接触によって把握することが要求される。

政府はまた、各コミューンのニーズを最も詳しく把握する県執行委員会が、国の特別助成金の適切な分配責任者として位置付けている。また、国政目標が各コミューンにおいて確実に実施されるかどうかを見守ることも、県執行委員会と社会庁の任務だとしている。

 

(5) まとめ

エーデル改革による医療と福祉の統合、行政窓口の一本化、ケア資源の効率的利用などの一連の努力は、高揚するニーズに対する画期的な対策であったといえる。さらに、高齢化の進む2000年代を前に、スウェーデンが国政目標としてかかげることは、一層の資源効率的利用もさることながら、ケアや介護の「質」の向上と高齢者およびその家族の「QOL」の向上である。さらに、公共が行なう高齢者事業と家族・近親者の提供するインフォーマル・ケアとの融合によって、個別ニーズを尊重し、情緒的にきめ細かい対応を目指すことである。住み慣れた環境での生活保障を推し進めるうえで、家族や近親者は高齢者の重要なネットワークであり、ひいては重要なケア資源であることを確認している。家族や近親者支援のための特別国助成金は、このことを如実に示すものである。

家族・近親者支援とともに力をいれるのが、職員のコンペテンスのレベルアップと研究・開発の強化である。特に、医療知識に関するレベルアップが、介護・看護ニーズの高くなった在宅高齢者や特別な住まいに暮らす高齢者への、質のよいケアを提供するための前提として要求されている。

エーデル改革は、ひとつの行政改革でもあったが、ポスト・エーデル改革として政府が重要視するのが、高齢者ケアの分権化によるひずみを是正するための努力である。共通の国政目標と基本的方針、さらに地方自治体への国の助成金は、地域格差を縮小し、普遍的なレベルを保障するための重要な手段として位置付けられる。社会サービス法の理念を個人レベルで実現するうえで、また国のコントロールと地方自治の独立権とのバランスをはかるうえで、地方自治体への国の財政援助がもたらす意味は大きい。90年代の国の財政赤字が克服されなければ、今回の財政援助は不可能であったといえる点で、90年代後半スウェーデンが財政建直しに成功した意義は大きい。

 

 

 

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